vol.03 えるふえる

新代田はソロ・シンガーとしての出発点

 2017年11月22日に4thシングル「WINGSCAPE」を発売したフィメール・シンガー、脇田もなり。お酒が大好き! だけど酒場ビギナーな彼女が東京近郊の名店を探訪しながら、立派な酒呑みレディへの階段を昇っていく連載「名酒場 IN THE CITY」。第3回はソロ・シンガーへの扉を開いた、あの街へ……。

知る人ぞ知る“飲みカワ”女性シンガー、脇田もなり。現在22歳、好きなお酒はハイボール。

 今回訪れたのは世田谷区・新代田。井の頭線の駅を降りると、目の前を走る環七通りには忙しなく車が行き交います。この新代田という街は、もなりさんの人生を変えた場所なんです。

 所属していたガールズ・グループEspeciaを2016年2月に脱退後、大阪から単身上京してきたもなりさん。表現者としての道を歩みたいと思いながらも、それが歌手なのかどうかはっきり見えないまま日々を過ごしていたのだそう。

 ちょうどその頃(2016年5月)、以前より親交のあったインドネシアのポップ・バンド〈イックバル〉の来日公演が新代田のライヴハウスFEVERで開催。

 もなりさんも純粋にライヴを観に行くつもりでいたところ、イックバルからゲスト・ヴォーカルとして1曲だけ参加してほしいという突然のオファーが。グループ脱退以来、表立った活動はしてこなかった自分がステージに立っていいのか? という逡巡もあったものの、「これが最後だ」という想いで出演を決意。

 事前の告知もなくシークレットゲストとして歌を披露──その会場に偶然居合せたのが、現在所属するレーベルのスタッフ。彼女の歌に惚れ込みソロ・デビューを持ちかけ──そこから一気に道が開け、同年11月にはシングル「IN THE CITY」で見事ソロ・シンガーとしてデビューを果たしたという。

 つまり新代田は、脇田もなりのソロ・シンガーとしての出発点なんです。

新代田FEVER前にて、約1年半前の夜に想いを馳せるもなりさん。

 シークレット・ゲストとして歌を披露してから約1年半、ふたたび新代田の街へ凱旋を果たしたもなりさん(って、呑みに来ただけですが)。

 FEVERとは反対方向の世田谷代田方面へ向かって環七沿いを歩くと、今回訪れる〈飲み屋 えるえふる〉が見えてきます。

環七沿いに紺色ののれんがはためく、「飲み屋 えるえふる」。もともとはギャラリーカフェがあった場所に、2年ほど前にオープン。

「わーっ、かわいいお店! 居酒屋さんとは思えないぐらい。あれ!? 奥にはCDやレコードがたくさんありますけど……」

2017.12.18(月)
文=宮内 健
撮影=山元茂樹