山口規子さんは、世界中を旅しながら、ジャンルを横断した素敵な写真を撮り続けるフォトグラファー。風景、人物、料理……、地球上のさまざまな場所でこれまで撮影してきた作品をサンプルとして使いながら、CREA WEB読者に旅写真のノウハウを分かりやすくお伝えします!

vol.4 小値賀島(長崎県)

暮らすように旅する「古民家ステイ」が楽しい!

古民家「先小路」は街の中心部にあるので何かと便利な立地。撮影時はリビング中央に立っている柱を邪魔と思わず、構図上のポイントにするとよい。

 夏休みは海外旅行をあきらめて国内旅行にしようと考えている人、ぜひこの島に行ってほしい~!

 日本は島国。目を凝らして海を見渡せば小さいけれど美しい島々がたくさんあることは日本の特典である。そして私の好きな島の1つに五島列島の小値賀島(おぢかじま)がある。

 西海に浮かぶ17の島々から成り立つ長崎県小値賀町の小値賀島は佐世保港からフェリーで2時間40分、または博多港からオシャレな「太古」という定期フェリーで夜23時45分に乗船すると朝4時40分に小値賀港に到着する。船が苦手という人もこのフェリーに乗船したら心ウキウキになること間違いなし!

 フェリーの部屋は、タイプもいろいろあり、スイートにはシモンズベッドを装備、ツインも3タイプ、グリーン和室やキッズルーム、ラウンジ、そして廊下の装飾にはマリメッコのファブリックパネルが! こんな素敵な船でも私は地元民との交流を求めてスタンダードの部屋をチョイス。英語でいうとスタンダードだけど日本語なら「雑魚寝型大広間」とでもいいましょう。

古民家「親家」の屋根裏部屋には立派な梁があり、それを眺める椅子も用意されている。梁は自然に作られた木の造形美を活かして、水平垂直より木の迫力を優先して撮影してみよう。

 どこからともなく聞こえてくるオヤジのイビキとともに着いた小値賀島の魅力は、一言でいうと古き良き日本の再発見にある。この島では、使われていない古民家を改装して「古民家ステイ」を実施している。「暮らすように旅する」なんてフレーズが2、3年前の女性誌や旅雑誌で謳われていたが、まさにその通り。あなたも古民家に泊まってサンダル履いて近くの八百屋で大根買ったら、もう島の人!

藤松という古民家レストラン。広い庭があり、海とつながっている。この写真は奥行き感より垂直を優先して真正面から撮影。

 そこで今回は古民家写真の撮り方をお教えしよう。いきなり連載の第4回目で古民家の撮り方ですか? と驚く人もいるだろう。これには裏話がある。

 ある日、Facebookで繋がっているCREA WEB編集室のT編集者から「水平垂直について聞きたいなあ」とのコメントをもらったこともあり、写真の重大要素の1つ「水平垂直」について教えるには建築物撮影が一番わかりやすいと判断したからである。そして小値賀島には、「日月庵」「先小路」「一会庵」「一期庵」「鮑集」「親家」と、6つも泊まれる古民家がある! さあ、どれから撮影しようか。

2015.07.24(金)
文・撮影=山口規子