キプロス島は、地中海の東端に浮かぶ小さな島。世界遺産に登録された街パフォス、境界線で分断された首都ニコシア、民芸品で知られるレフカラなど、見どころがいっぱい。このキプロスを、たかせ藍沙さんがレポートします。
第6回は、ハルミチーズが作られるレティンブウ村、ワイナリーがあるレモナ村、自然保護区のアカマス半島、「アフロディテの泉」を訪れます。
熱々でふわふわの
できたてハルミチーズ!
「ハルミ」という、まるで日本人女性のような名前のチーズをご存知だろうか。ヤギやヒツジのミルクから作られるキプロス固有のチーズだ。熟成させないので色が白く、保存のための塩とミントが利いている。
キプロス以外でも、ギリシャやトルコなど、地中海沿岸で造られているが、本来、「ハルミ」と呼ぶことができるのはキプロス産のみ。キプロスに行ったら必ず食べたい逸品だ。
ハルミチーズは、軽く焼いてから食べることが多い。焼いても型崩れせず、口に入れると弾力があって、噛むとキュッキュッと音がするほどしっかりしている。今回は出会えなかったけれど、フライにすることもあるという。
訪ねたのは、キプロス特集第1回でご紹介したパフォスから内陸に車で30分ほどの場所にあるレティンブウ村。この村に住むソフィアさんのお宅で、ハルミチーズやパンの作り方を見学させていただいた。
ハルミチーズは、ヤギまたはヒツジのミルク、あるいはその両方を混ぜて作る。現在では牛乳を混ぜて作られることもあるが、牛乳100パーセントのものはハルミチーズとは呼ばない。
右:ハルミチーズは、大きな鍋で温めたミルクをすくって成形する。鍋の中に浮いているのはミントの葉。
作り方は簡単だ。ミルクを大きな鍋に入れて温め、レンネット(枇杷の葉などを使った植物由来の凝乳酵素)とミントを入れてかき混ぜる。固まってきたらすくってだ円に成形し、ふたつに折る。
右:ふたつ折りした中央にミントの葉が挟まっている。チーズが固まる前に刻んで混ぜることもあるという。
「ハルミ」という名前は、古代ギリシャ語で「海の塩」を意味する「アルミ」に由来している。その名の通り塩分が多いので塩辛く感じる。サラダに入れたり、パンとともに食べたりするにはちょうどいい。
右:ご主人がコーヒーを淹れてくださった。粉末のコーヒー豆を沸かして上澄みを飲むスタイルだ。
ソフィアさんが焼きたてのパンを用意してくださったので、できたてのハルミチーズを載せていただいた。まだ温かいハルミチーズはやわらかくモチモチしていてクセもなく、ほのかなミントの香りがして美味しかった。
2017.11.16(木)
文・撮影=たかせ藍沙