キプロス島は、地中海の東端に浮かぶ小さな島。世界遺産に登録された街パフォス、境界線で分断された首都ニコシア、民芸品で知られるレフカラなど、見どころがいっぱい。このキプロスを、たかせ藍沙さんがレポートします。

 第2回は、城壁に囲まれた旧市街が趣ある首都ニコシアを訪れます。

旧市街で昔ながらの石畳を歩く

ヴェネツィア時代に造られた城壁にある3つの門のうち、もっとも大きなファマグスタ門。現在はカルチャーセンターになっている。

 キプロスの首都ニコシアは、島の中央からやや北東よりの内陸に位置する。「ニコシア」は英語の発音で、ギリシャ語の発音では「レフコシア」となる。新石器時代には人が住んでいたという歴史ある町だ。ヴェネツィア時代(16世紀)に造られた城壁があり、その内側は古い町並みが残る旧市街となっている。

 また、ニコシアは、世界で唯一、町の中心が分断されている首都だ。四国の半分程度の面積の島国、キプロスは、1960年に共和国として独立を果たした。ところが、1974年に起きたギリシャ系住民のクーデターを機にトルコ軍が侵攻し、島の北東約3分の1を「北キプロス・トルコ共和国」と称して支配してしまったのだ。

 キプロス北部を国として認めているのはトルコだけとなっている。ギリシャ系住民とトルコ系住民の居住区にはグリーンラインと呼ばれる境界があるものの、2008年からは自由に行き来ができるようになった。

 旧市街の南側を歩いてみた。特にライキイトニアと呼ばれる一角は、19世紀から20世紀初頭の石畳と古い家並みが多く残されていて風情がある。この日は小雨がぱらついていたので人出は少なかったが、裏路地にはテラスにテーブルを出して客待ちしているカフェ、土産物を売っている露店などが並び、温かい雰囲気が感じられた。

旧市街のリドラス通りは、大きなショップやカフェが並ぶメインストリート。この道の先にクロスポイントがある。
リドラス通りの周囲には、小さな店が軒を連ねるかわいい路地がたくさんある。

 旧市街のメインストリートであるリドラス通りは華やかだ。地元の買い物客でにぎわうファッショナブルな大型ショップが並び、カフェでは大勢の人々がおしゃべりに興じている。

左:テラス席がずらりと並ぶレストラン。看板には「グリル・メゼ」と書いてある。東地中海の名物料理メゼの店だ。
右:裏路地には道端に台を置いて土産物を売る小さなお店も。

 城壁側からリドラス通りを歩いていくと、右側に「H&M」のショップがある。このビルの11階にあるのが、有料の展望台シャコラス・タワーだ。入り口はH&Mに向かって右の角を曲がった先。

シャコラス・タワーがあるのはH&Mのあるビルの11階。

 展望室からは360度の風景を一望でき、ニコシアの町はもちろん、グリーンラインの先のモスクや遠くの山々まで眺めることができる。

グリーンラインの先の右手にモスクのミナレット(塔)が見える。2本の塔の間の三日月形のものはガラスの写り込み(ごめんなさい!)。
展望窓の手前にはタッチパネルのモニターがあり、主要な建物の説明を表示させることができる。

 ふたたびリドラス通りに戻り、まっすぐに歩くとグリーンラインを越えることができるクロスポイントがある。トルコの文化に触れたい場合はパスポートを携帯しておこう。

2017.09.16(土)
文・撮影=たかせ藍沙