BOOKS INTERVIEW 本の本音

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自死遺者の心情を追った意欲作
高橋弘希の『日曜日の人々』

現代の病理と希死念慮を見つめる
ダークな青春

今月のオススメ本
『日曜日の人々』 高橋弘希

〈僕〉は従姉の自死をきっかけに、心の傷を抱えた人々による自助グループ「レム」の存在を知った。不眠症で希死念慮を持つ管理人・吉村や、クレプト(窃盗症)の通称「ビスコ」を通して会に関わるようになり、拒食症の大学生ひなのと、いつしか心を通わせていく。
高橋弘希 講談社 1,400円

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 高橋弘希さんの『日曜日の人々』は、社会問題になっている現代のさまざまな病理と、身近な人に死なれてしまった〈自死遺者〉の心情を追った意欲作。

「好意を持っていた従姉に自死され、彼女の日記らしき紙束の一部を読んでしまった〈僕〉は、無自覚だったことで、自分も奈々の死に加担したのではないかという罪悪感に捉えられてしまいます。同時に、〈僕〉の中に芽生えた、彼女の死の理由を知りたいという衝動。それに背中を押され、素性を明かさないまま、奈々が参加していた自助グループ“REM”に出入りするようになります」

 会では、自らの問題について発表し合うのだが、その原稿を“日曜日の人々”という冊子にまとめる活動もしていた。〈僕〉こと航は、そこに奈々の本当の思いがあるのではと考え、閲覧可能になる半年を待ちながら、レムの参加者と交流していく。

「大学生のころに拒食過食の問題を知って、ずっと引っかかっていました。その摂食障害の話も含め、物語の断片みたいな短いテキストをあれこれ書きまくった時期があるんです。7年くらい前ですね。それをまとめた物語にできないかと考えているうちに、架空の冊子を主人公が読む形を思いつきました」

 問題を抱える人々の内面が、見てきたかのようにリアルに描かれるが、

「分からない部分が出てきたら、テレビのドキュメンタリーを見たり、図書館で本を読んだり、ただディテールは想像による部分も多いです。ひなののような拒食では、幼児退行していくらしいというのは知っていたので、作品のエピソードに合うなと思いました。手記というスタイルを取り入れたので、語り手の深くに潜っていくことができた。最初は『何を考えているんだろう』とわからなかった人物も、なりきって書くうちに見えてくるものがありました」

 高橋さんの小説には、しばしば死の匂いがつきまとう。

「宇宙の成り立ちと同じで、どうやっても理解できないような深いテーマのほうが、僕も書いていて面白い。死とは何かなんて、答えがないというか、そもそも答えなんてあるのかとさえ思います」

 レムに出入りし、奈々の死の真相に近づくにつれ、航の精神に現れてくる変化。行き着くところまで行き着いた、その場面の描写は圧巻だ。

「主人公も、ひなのも問題を乗り越えて成長する。僕なりに、オーソドックスな、王道の青春小説を書いたつもりです」

高橋弘希(たかはし ひろき)
1979年、青森県生まれ。2014年「指の骨」で第46回新潮新人賞受賞。著書に『指の骨』『朝顔の日』『スイミングスクール』がある。

<この記事の掲載号>

CREA 2017年11月号

やっぱり行きたいね、
京都。

鴨川べりの散歩道、かくれ家カフェに、しみじみおいしいごはん処――。忙しい日々の中でふと戻りたくなる町、京都。混んでいると聞いて最近少し足が遠のいていた人も、町が赤や黄色に色づく季節だから、久しぶりの京都旅にでかけませんか? 紅葉の隠れ名所に、外れなしのごはんリストなど、盛りだくさんの1冊になりました。

定価780円

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2017.11.05(日)

文=三浦天紗子

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