BOOKS INTERVIEW 本の本音

BOOKS INTERVIEW 本の本音

“社会全体での子育て”をシミュレート
小説『キッズファイヤー・ドットコム』

クラウドファンディングで
子育てへの寄付を募る?

今月のオススメ本
『キッズファイヤー・ドットコム』 海猫沢めろん

クラウドファンディングで子育ての寄付を募る「日本を革命するソーシャル子育てサイト」が発足。出資金額に応じて、子どもの成長を見守る会員限定ブログの閲覧や命名権(!)が得られる……。そんな2015年の物語が、2021年にジャンプする、全2篇。
海猫沢めろん 講談社 1,300円

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 子育ては、実の親や親族がするもの。そんな常識を打ち壊し、社会全体で子育てすることはできないか? 海猫沢めろんは『キッズファイヤー・ドットコム』の表題作で、その発想を具現化してみせた。

 心当たりのない赤ちゃんを託されたカリスマホスト・白鳥神威が、クラウドファンディングで支援者を募集。〈ホストであるからには月に何本稼げるのかで格が決まります。だから彼―この赤ちゃんにも0歳のホストとして指名を取ってもらおうと〉。賛否両論必至のアイデアが、日本中を沸騰させていく。

「結婚や子どもを巡る議論はもっと多様化していいと思うんです。この話の中には、結婚をせず子どもも持たずに、ひとりで死んでいっていいんだろうかと悩む女性も登場します。男はいらないけれど子どもは欲しいと思っている女性も、最近は意外と多いんじゃないでしょうか。読めばいろんな人生がシミュレーションできるし、読んだ後は見えなかったものが見えるようになるものを書いたつもりです」

 表題作は親目線だが、同時収録の「キャッチャー・イン・ザ・トゥルース」は子ども目線に変わる。

「1篇目を書いた時に、この赤ん坊が育ったらどうなるか気になったんです。ただ、言葉を喋ってくれないと“彼”が何を考えているのかが分からない。そうすると、年齢的に6歳ぐらいがいいかなぁと思った結果、未来篇に突入しました(笑)。2篇目は今年書いたんですが、僕の子どももちょうど6歳なんです。それぐらいの年になると親子の同一性みたいなものが剝がれて、立派なひとりの人間として感じられる。子どもの感じは、我が家の現実とリンクしていると思います」

 著者は昨年、妻子と共に東京から九州へ移住した。

「奥さんはピアノを極めようと東京芸大まで行ったんですけど、卒業しても就職せず塾講師のバイトをしながら、2畳の部屋に住んで医者を目指し始めた人で。何浪目かの時に彼女と出会ったんですが、つわりの時もセンター試験を受けてました(笑)。長女気質で子育てもきっちりしたがったので、彼女が精神的にきつい時は僕が奪い取る感じで、ワンオペ育児も体験して。ずっと“10浪したら俺がひとりで育てる!”と言ってたんですよ。9浪でやっと九州の大学の医学部に受かったから、そりゃあ一緒に行くしかないじゃないですか」

 子育てを題材に一級のフィクションを作り上げた人は、人生も面白い。

(C)Daisuke HAYATA

海猫沢めろん(うみねこざわ めろん)
1975年、大阪府生まれ。兵庫県姫路市育ち。2004年『左巻キ式ラストリゾート』でデビュー。著書に、『明日、機械がヒトになる ルポ最新科学』『夏の方舟』など。

<この記事の掲載号>

CREA 2017年10月号

触れて、感じて、ほっとする
リラックスするための美容。

定価780円

購入はこちら

2017.10.04(水)

文=吉田大助

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