クララ・シューマンなど
女性作曲家の作品を採り上げる
1978年兵庫県出身。大阪音楽大学大学院修了。新国立劇場オペラ研修所第5期修了。2008年より英国ロイヤルオペラに在籍、2010年から2016年までバイエルン国立歌劇場の専属ソリストを務める。また、ベルリン・ドイツ・オペラ、パリ・シャンゼリゼ劇場などに客演する他、コンサートでも活躍。最近では、ロイヤルオペラ『リゴレット』、ワシントン・ナショナルオペラ『魔笛』などで高い評価を得た。
世界で活躍するソプラノ歌手、中村恵理が日本の聴衆のために特別な演奏会を用意している。テーマは「悩める女性の群像」(東京オペラシティ リサイタルシリーズ「B→C バッハからコンテンポラリーへ」)。2017年3月21日(火)に開催される。
クララ・シューマンやファニー・メンデルスゾーン、ロシアの現代作曲家ソフィア・グバイドゥーリナ、夭折の天才リリー・ブーランジェという女性作曲家の作品を採り上げ、演奏機会が少ない貴重な楽曲に光を当てる。
「作曲家にしても演奏家にしても、クララ・シューマンの時代は今よりはるかに女性が冷遇されていて、今のように男女平等ではなかった。男性より劣った性として扱われることが多く、作曲家として溢れるほどの才能に恵まれていたクララも、夫ロベルト・シューマンほど評価されることがありませんでした。クララの曲はとても美しく、私が泣くかピアニストが先に泣くか……というほど(笑)。ロマン派の歌曲は女性賛美的な内容のものが多いですが、女性が書いた作品においても洗練された温かみのある世界に浸れます。グバイドゥーリナはバッハの『ヨハネ受難曲』に影響を受けた曲を書いていたり、とても宗教的なところがある作曲家。ソプラノのために書かれた『T.S.エリオットへのオマージュ』の中の一曲を歌いますが、技術的にとても難しい作品です」
フレンドリーで気取らない性格。若くして超一流のキャリアを築いてきた中村だが、素顔は自然体で気張ったところが全くない。世界的な舞台に立ち、中でも、オペラ界の女王アンナ・ネトレプコの代役としてベッリーニの『カプレーティとモンテッキ』のジュリエッタ役を英国ロイヤル・オペラで演じたことは、中村が大きく注目される機会となった。
現在はドイツ・バイエルン歌劇場をはじめ、世界中のオペラハウスに出演している。
2017.03.17(金)
文=小田島久恵
撮影=山元茂樹