最後に、旅の出会いは写真から

左:タートルアン祭りに托鉢にきた僧侶。眼光が鋭くかっこよかったので、まずは声かけずにパチリ!
右:象使いの村の少女。お櫃の中のもち米をずっと食べ続けていた!(笑)

 旅には出会いがつきもの。旅行会社のツアーで行くと残念ながらその確率は低くなってしまうが、一人旅なら毎日が出会いだらけ。

 最近の報道を見ていると、テロ事件やらレイプ事件やら、世界中の人が全て悪い人に思えてくるような悲しいニュースばかりだが、悪い人ばかりでないこともわかるのが、旅での出会いである。

左:タートルアン祭りに来た人々を撮影して写真を売る夫婦。同業者なので写真を見せあう仲になった。
右:ジーンズ縫製工場で働く女性。ほとんどが女性というこの工場を見ていると、一家を支えるアジア女性のパワーを感じる。

 私の場合でいうと、空港で水を買うお金がなくて小銭を数えていると、隣の紳士がさっと小銭を差し出してくれたり、道に迷って地図を広げていると、後ろから来た女性が一緒に目的地まで連れて行ってくれたり……。

 もちろん逆のバージョンもある。写真を撮っていたら石を投げつけられたり、フィルムを出せと言われたり。まあ、旅にはいろんなことが起こる。

生まれたばかりの赤ちゃんを抱く夫婦。ラオスでは結婚すると夫が妻の家にはいる女系家族が基本形式。しかし、夫も自分の家族と同居したいのでもめることも度々。

 しかしながら写真を撮ったことから始まる人間関係や、カメラの液晶画面で画像を見せて笑い転げるような同じ感覚の共有など、写真によって言葉を超える瞬間が訪れることがあるのも事実なのだ。

メコン川沿いは街の喧騒を忘れさせてくれる風がいつも吹いている。疲れた時は川の流れを見に行こう。

 以上。次回は何のコツをお教えしようかと検討中。旅先の写真撮影でこんな時どうしたらいいの? など、取り上げてほしいテーマがあれば、CREA WEBの「掲載記事へのご意見・ご感想」フォームからご意見をお寄せください。

山口規子(やまぐち のりこ)
栃木県生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業後、文藝春秋写真部を経て独立。現在は女性ファッション誌や旅行誌を中心に活躍中。透明感のある独特な画面構成に定評がある。『イスタンブールの男』で第2回東京国際写真ビエンナーレ入選、『路上の芸人たち』で第16回日本雑誌写真記者会賞受賞。著書にひとつのホテルが出来上がるまでを記録したドキュメンタリー『メイキング・オブ・ザ・ペニンシュラ東京』(文藝春秋)、『奇跡のリゾート 星のや 竹富島』(河出書房新社)や東京お台場に等身大ガンダムが出来上がるまでを撮影した『Real-G 1/1scale GUNDAM Photographs』(集英社)などがある。また『ハワイアン・レイメイキング しあわせの花飾り』『家庭で作れるサルデーニャ料理』『他郷阿部家の暮らしとレシピ』など料理や暮らしに関する撮影書籍は多数。旅好き。猫好き。チョコレート好き。公益社団法人日本写真家協会会員。

 

Column

山口規子のMy Favorite Place 旅写真の楽しみ方

山口規子さんは、世界中を旅しながら、ジャンルを横断した素敵な写真を撮り続けるフォトグラファー。風景、人物、料理……、地球上のさまざまな場所でこれまで撮影してきた作品をサンプルとして使いながら、CREA WEB読者に旅写真のノウハウを分かりやすくお伝えします!

2016.07.23(土)
文・撮影=山口規子