ライザップが売りつける甲冑とは?

しまお 次のお題は……(画用紙をめくって)、「私が欲しい甲冑」。私の場合は英語ですね。美貌とかファッションセンスとかいろいろ考えたけど、英語ができれば全部クリアかなって。

ジェーン ご存じ? 今日、電車の車内広告見て知ったんですけど、ライザップがTOEICの受験指導を始めました。

しまお エーッ(同時に会場騒然)。

ジェーン 天才でしょ。だって、自分に三十何万もかけて体を作り上げていこうっていう人は、やっぱり自分の人生をアップリフティングしていきたいんですよ。そうしたら次は英語でしょ。結果にコミットしてくれるんだよ。

しまお 体は鍛えなくていいの?

ジェーン 体は鍛えなくていい。ライザップに体を鍛えに来てる意識高い人たちからもう一つ刈り取るには英語だよ。こうやって私たちは甲冑を売りつけられているんですよ、毎日。

しまお 私、もうまんまと乗せられてましたね。

ジェーン でも、そこでまた下駄はいちゃって、私の居場所はここじゃない、みたいな。

しまお でも英語を身につけられたらいいですよねえ。鈴木亮平もしゃべれるでしょ?

ジェーン あ、そうなんですか。あと誰ですか?

しまお ショーンK。ショーンKのKは甲冑のKですから!

ジェーン ショーン甲冑(笑)。腑に落ちましたわ~。

しまお で、考えたんですけど。結局私がうらやましいのは、YOU。YOUって、是枝(裕和)監督の映画の現場に、一切セリフを覚えていかなかったんだって。うらやましい。私も覚えていかないタイプだけど、覚えないで腋汗かくタイプっていうか、覚えてるフリするタイプだから。(しまお註:後日調べたところ、YOUさんは「覚えていかない」のではなく、是枝監督が「台本を渡さないで自然な演技を引き出して」いるそうです。お詫びして訂正します!)

ジェーン YOUはノースリーブしか着ないから、腋汗かいてるかもわかんない。

しまお  “私はYOUになりたい”っていう感じかな。

ジェーン あはは。

しまお すいません、自分の話ばっかりして。

ジェーン 全然大丈夫です。

しまお 最初に、今日はスーさんの話聞きますっていったのに。(talk05に続く)

ジェーン・スー
作詞家/ラジオパーソナリティ/コラムニスト。著書に『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)、『ジェーン・スー 相談は踊る』(ポプラ社)など。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』で第31回講談社エッセイ賞を受賞。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」(月~金、11:00~13:00)が放送中。

しまおまほ
エッセイスト。1997年に漫画『女子高生ゴリコ』(扶桑社)でデビュー後、漫画やエッセイを執筆する他、TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」にレギュラー出演するなど、幅広く活躍を続ける。現在、「文學界」に小説「スーベニア」を連載中。著書に『マイ・リトル・世田谷』(スペースシャワーネットワーク)など。

女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。

著 ジェーン・スー
本体1,300円+税 文藝春秋

» 立ち読み・購入はこちらから(文藝春秋BOOKSへリンク)