『マイ・リトル・世田谷』を目指したはずが

ジェーン 『マイ・リトル・世田谷』を読んで「自分の半径5メートルから10メートルくらいの話を書きながら、文章にしづらい世田谷の空気感をこんなに丁寧に描けているのはすごいな」と思って、私、こういう本が作りたいって思ったんですよ。で、『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』を作り始めるかなり早い段階で、担当編集者に「こういう本を作りたい」っていって『マイ・リトル・世田谷』を見せたんです。実はですね、全く皆さんお気付きにならないと思うんですけど、行数とか字数とか行間とか、似せてるんですよ。にもかかわらず、なんでこんなに違う本ができた? と思って(笑)。

しまお いやいやいや。

ジェーン なんだろう。しまおさんの本の行間から漂う空気をまといたかったのに、またしてもミッチミチな本になっちゃって。

しまお 私は文章書くとき、なんかちょっとおセンチなモードになっちゃうっていうか……。なんかいい子ぶっちゃったなって、書いたあと結構思うんですよ。

ジェーン そうですか?

しまお うん。だから、スーさんの文章の「さっきのやっぱ嘘です」みたい感じ、すごくいいなと思って。取り入れようと思いますね。私は「これ嘘だな」と思ったら直しちゃって、嘘をついた自分をとりあえず「なし」にしてるから。

ジェーン ああ、なるほど。私は「嘘です」って書きますね、後から。戻って直すの面倒くさいから(笑)。

しまお まあ、行数も稼げるし(笑)。

ジェーン そうそう。今日皆さんに知っていただきたいのは、『女の甲冑~』は『マイ・リトル・世田谷』を目指してこうなったってことなんです。弁当箱だけ同じにしても同じ弁当はできないっていうことが本当によくわかって。「曲げわっぱ」の弁当箱を買ったところで、中に入れるのが魚肉ソーセージじゃあねえ。

しまお いやいやいや。でも、そんなふうに思っていただけるとは思わなかったです。

ジェーン だから今日はしまおさんと一緒にと思って、お声を掛けたんですけど。

しまお ありがとうございます。

2016.07.09(土)
構成=臼井良子
撮影=鈴木七絵