アクニン目キケンジンブツ科「アメンボ系男子」

危険度  ★★★★☆   生息地  前衛的な服屋

 好きな女性に振られた時、あなたはどうしますか?

 “「そうか。幸せになれよ」と言って去る”

 一見爽やかですが、「お前に言われる義理はない」と思う人も多いかもしれません。

 “立ち直れないほど落ち込む”

 振られてしまった以上、立ち止まって時間を無駄にすることは良策とは言えないでしょう。また、重いと受けとられることもあります。

 “切り替えて新しい人を見つける”

 これはこれで節操のない印象を受けます。誰でもよかったのね……と陰口を叩かれ評判を落とすかもしれません。

 “諦めずにもう一度アタックする”

 1回程度であれば微笑ましいものですが、いきすぎれば法で取り締まられる可能性も。

 どんな時でも正しいと言える対応はなかなかないものです。しかし、確実に間違っていると言える対応はあります。振られた時に一番してはいけないこと̶それは、逆ギレです。付き合えないとわかるや否や手のひらを返して「ふざけんなブス」などと捨て台詞を吐くくらいならまだかわいいもので、「あいつはろくな女じゃない」といった風説を周囲に流布したり、手を上げてきたりするなど信じられない輩もいます。

 愛と憎しみは表裏一体。「かわいさあまって憎さ百倍」とはよく言ったもので、好きだと思う気持ちが強いほど、一旦憎悪の対象となると憎しみの度合いも甚だしくなるものなのかもしれません。

 しかし、好きでもなんでもない側からすればいい迷惑です。

 実は昆虫にも同じような迷惑なやつがいます。公園や水たまりの水面を滑るように移動するごく小さい昆虫。体から飴のような甘い匂いを出すことからアメンボと呼ばれるその昆虫も、メスに振られると最低男に変身します。

 交尾の際、アメンボのオスはまずいきなりメスにのしかかります。

 これではメスが拒否するのも当然です。

 しかし、オスは変形した触角を持っており、メスの眼にそれを引っ掛けるようにして固定してしまいます。こんなことがまかり通っていい訳がありません。

 メスのほうもオスを拒むように様々な工夫をこらします。その極めつけが生殖器をガードするシャッターです。アメンボのメスは自己中なオスに対抗すべく、自らの意思で開閉するシャッターを身につけ、意に添わぬ交尾を避けるよう進化したのです。

 しかし、アメンボのオスは大層くせ者で、メスが自分のものにならないとわかると、とんでもない作戦に打って出ます。

 水面を激しく叩き、天敵であるマツモムシを呼び出すのです。マツモムシとは背中を水面に向け、オールを漕ぐように長い脚を動かして泳ぐ水生昆虫です。

 「マツモムシさん、こんな女食べちゃってくださいよ!」

 とばかりに水面を叩きまくります。

 振られた腹いせに、普段良く思ってない相手の力を借りて報復するなんて、これ以上ないほど最低の男です。

 これにはメスもたまったものじゃない。食べられるくらいなら……と、しぶしぶシャッターを開き交尾に応じる。

 メスにはぜひとも更なる進化で、この不届きものたちを成敗してほしいものです。

アメンボ系男子の特徴
●そもそも告白の仕方から駄目 ●振った女が悪いと本気で思っている  ●何故振られたかは問題ではない 
●日頃からボディタッチが多い  ●普段は悪い人ばかりではないが、よく見ると自己中
●一人に執着してるのかと思いきや、意外と惚れっぽい ●服のセンスが独特

 

アメンボ系男子の対処法

 とにかくすぐに離れるに限ります。

 告白される前は普通に仲良かったのに……などとうじうじ悩んでいると、どんどんエスカレートしてくるので、とにかく離れることが重要です。

 中途半端に優しくすると、それも「勘違いさせた」「誘ってきた」など攻撃の材料にしてしまうので要注意。

 逆に厳しくしすぎても攻撃されるので厄介。

 周りがアメンボ系男子の主張を鵜吞みにして責め立ててくる可能性もあるため、根回しの必要が出てくる場合もあります。

 しかし、もし、あまりにもあなただけが周囲から責められる場合は、実はアメンボ系男子ではなく、あなたのほうに非があるのかもしれないので、自分を省みてみましょう。

 外野から見ていて、今まで普通だった友達がアメンボ系男子になったことに気づいてしまった場合、どう対応すべきか迷うと思いますが、普通に注意すれば意外と大丈夫。当然例外はありますが、こう見えて他人の目を気にするアメンボ系男子は、失恋相手以外の忠告はすんなり聞き入れてくれることが多いです。

 くれぐれもアメンボ系男子の言い分を信じ込んでマツモムシになってしまうことがないようにしましょう。

 

アメンボ
半翅目・アメンボ科
生息地:熱帯から亜寒帯
特徴:川蜘蛛、水馬、あしたかなどの別名を持つ。多くは淡水性だが、陸地や海洋に生息する種類も存在する。油でコーティングされたブラシ状の脚と細く軽い体を持ち、水面を滑るように移動することができる。水面に落下した昆虫をとらえて、細長い口吻を突き刺し、体液を吸う。水の上を移動しているイメージが強いが、飛んで移動することもできる。