確実に人をキレイに見せるアイテムの宝庫

 すべての製品をプロデュースするのは吉川康雄氏だが、ニューヨークの第一線で活躍するこの人が、長年の経験で行きついた絶対のこだわりを今、ひとつひとつ丁寧に形にしているわけだ。“アーティストコスメ”と言えばアーティストの感性でより斬新なメイク提案を競うのが常なのに、吉川氏は“新しさ”ではなく、奥の奥に潜むメイクの本質、メイクの奥義というものを丁寧にあぶり出すことに情熱を傾ける。そこが飽和状態となっている今のメイク界で、異例の支持を得ているのだ。“素人”も“通”もなく。

 アイシャドウではアイホールそのものに透明感をつくり、“伏し目”を最も美しく見せるまぶた化粧のベースカラーを発表。これもヒットさせたし、今春はラメ入りのルースパウダーを発表したが、ここに配合されたのは、“ミストラメ”とも言うべき、ほのかなラメづかい。自然光を受けた女の肌の美しさを描いた印象派の女性画を思わせる仕上がりから“印象派のおしろい”とも位置づけられた。

 また、世の中のルースパウダーは、ルースと言っておきながら発色してしまう。だから本物のルースをつくったと語る。本当の意味で無色透明のルースパウダーが、肌の質感だけを美しく補正して、まさに光に映えて、その人自身がキラキラする仕上がりを目指したのだ。

 ともかくここは、他にはない、究極のナチュラルメイクにして、確実に人をキレイに見せるアイテムの宝庫。新作のたびに新しい法則が生まれるのは快感ですらある。次は何が出てくるか、もう待ち切れない。

齋藤薫 Kaoru Saito
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌において多数のエッセイ連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『人を幸せにする美人のつくり方』(講談社)、『大人になるほど愛される女は、こう生きる』(講談社)、『Theコンプレックス』(中央公論新社)、『なぜ、A型がいちばん美人なのか?』(マガジンハウス)など、著書多数。

Column

齋藤 薫 “風の時代”の美容学

美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。

2016.03.01(火)
文=齋藤 薫
撮影=吉澤康夫

CREA 2016年3月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

新・東京ガイド。

CREA 2016年3月号

ひとりでも、みんなでも
新・東京ガイド。

定価780円