イギリスのライフスタイルを発信するカフェ

左:手作りカップに入ったカフェラテ(奥/38香港ドル)とドミニカ、エクアドル、ボリビア、ベネズエラの産地で選ぶチョコレートドリンク(手前/36香港ドル)。
右:細長い店内。外にはテラス席も用意されている。

 香港島の湾仔に「電氣街」(エレクトリックストリート)という通りがあります。100メートル程度の短い坂道はちょっとした傾斜で少し歩くと行き止まり。香港に初めて電気がついたのが1890年12月1日のことで、香港島ミッドレベル一帯に電気と飲料水を供給する計画により、この坂道に香港初の発電所である「湾仔発電所」が1889年に設立。この道は電氣街と呼ばれるようになりました。

 その一角にある坂道が「聖佛蘭士街」(セントフランシスストリート)。以前、この場所にあった病院の名前からつけられているそうです。

 この坂道がイギリスの雰囲気に似ている、と小さなカフェをオープンさせた香港人が、イギリスで建築を学び仕事をしていたマークさん。サードウェーブとしてイギリスで流行していたカフェ文化を香港にも紹介したいと思い、カフェ「SFS」を始めたそうです。「セントフランシスストリートやこの辺りを取り巻くストリート、特に坂道がイギリス・ロンドンイーストなどを思い出させるんだ」と話すマークさんはイギリスから帰国後、その雰囲気が気に入って湾仔に住みはじめました。

左:店内キャビネットには、イギリスから取り寄せた食器や小物、香港で採取したハチミツなども販売。
右:「このストリートの雰囲気を味わいに、ぜひ来てほしい」というオーナーのマークさんとスタッフのポリーさん。

 隠れ家のように階段を上がって裏庭から入る「SFS」。店名は、セントフランシスストリートの頭文字から。カフェで使用しているコーヒー豆は、全てイギリスのブランド、ヌードエスプレッソのもの。浅いローストで豆本来の味や風味が楽しめる、イギリスでも人気のあるブランドだそうです。顧客は、ご近所さんや近隣のオフィスに勤めている人たちが多く、マークさんは「近所に住むイギリス人が初めて来た時、コーヒーを飲んで、イギリスにいた時と同じ味だと言って、それ以来毎日来てくれるよ」と嬉しそう。

この坂道がセントフランシスストリート。坂の途中、オレンジ色のビルの階段を上がると、カフェ「SFS」と、次ページで紹介するギャラリー「ODD ONE OUT」の入り口が見える。

 コーヒーの味だけでなく「人とのふれあい」も、彼が大切にしているもの。イギリスで見ていたカフェは、ただコーヒーを頼んで飲むだけではなく、人間同士のふれあいが店の雰囲気を形成していたそうです。「狭い店内だけど、そんな風に人が集まれる場所にしたい」。不定期なワークショップも開催し、本当に憩える場所をこの街で続けていくのが夢だそうです。

SFS
所在地 G/F, 14 St. Francis Street, Wanchai, Hong Kong
電話番号 +852-2527-7898
営業時間 月~金曜 8:00~20:00、土・日・祝 10:00~19:00
※旧正月休み

2015.10.28(水)
文・撮影=ジェニー中村