「電氣街」周辺の昔と今の姿

1950年代のころの湾仔。この建物(郵便局)の斜め後ろにサンストリート、セントフランシスストリート一帯が広がっている。

 香港初の発電所として1889年に誕生した湾仔発電所からの電気の供給は、ミッドレベルから香港島全体へ広がり、第2の発電所(※北角の電氣道)が建設され、その後1922年、湾仔発電所は停止となります。

 そして電氣街近辺は、住宅地に開発され、周りには日街(サンストリート)、月街(ムーンストリート)、星街(スターストリート)が作られました。電氣街一帯らしく、聞くからに明るい感じがしますが、これは、中国の初級学習書物の「三字経」にある、「三才者 天地人 三光者 日月星(三才とは、天地人。三光とは日月星)」という一句を引用し、香港初の発電所がもたらした明るさを記念して命名したと言われています。

左:スターストリート界隈にある公園。小さいながら、ベンチや緑がたくさんあり、お昼時には多くの人が憩っています。入り口には、“光・Light”と書いたパネルがあり、この地域や通り名の由来の説明が書かれています。
右:ムーンストリートも100メートルほどの短い通りです。両脇の細い路地から、スターストリート、サンストリートへ抜けることができます。

 閑静な場所だったこのあたりですが、少しずつバーやレストランが開店し始めたのが2000年前後。平行に並ぶスターストリートとムーンストリート、それに垂直にあるのがサンストリートとセントフランシスストリート。

 香港初の発電所から、住宅街へと様変わりしたこの一帯、レストランやインテリアショップも多く健在していますが、どこか人の生活の匂いがするカフェやギャラリーも、ずっと存在していってもらいたいものです。

ジェニー中村 (ジェニー なかむら)
1986年より香港在住のメディアコーディネーター。雑誌やテレビの取材コーディネートや「食」の分野を中心に、幅広く香港を取材、執筆活動などを行っている。“日々変化する香港”にテンポを合わせながらも、ふと振り返る“記憶の中の香港”に白昼夢するのが大好き。
ブログ「香港スタイル」 http://www.cathaypacific.co.jp/hongkong/blog/nakamura

Column

香港ストリート 今昔物語

いつでもどこかが工事中! そんな日々進化(?)し続けるアジア随一の国際都市・香港。香港在住のジェニー中村さんが、この街に縦横に走る数々のストリートの今と昔の姿、そこで生きる人々の目線から、香港人も知らない香港の魅力をじっくりとご紹介します。知れば知るほど香港が好きになる!

2015.10.28(水)
文・撮影=ジェニー中村