観光名所の名だたるお寺から僧侶が総結集

光明真言行道。(写真提供:西大寺)

 次に僧侶たちが光明真言を唱えながら堂内をまわる行道があります。一音唱えるのに畳一畳を進んでは止まり、止まっては進む、ゆっくりさがこの法要の醍醐味なのです。

オーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
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 雅楽の奏楽も加わり堂内は地味に最高潮を迎えます。地味ながらも荘厳な祈りの声に満ちた空間、目の前を緩やかに行き過ぎる僧侶たちの姿、私は時の経つのも忘れ法悦に酔いしれるのでした。

 この法要のために全国から末寺の僧侶が参集するのですが、特に奈良からは寶山寺、元興寺、般若寺、海龍王寺、不退寺、不空院、白毫寺、福智院、長弓寺などなど観光名所の名だたる古刹の名前が並んでいます。

 知らなかった! あのお寺もこのお寺も真言律宗だったのですね!

 さらに行道する僧侶の中に律寺としてゆかりの東大寺や唐招提寺の僧侶の姿を見つけることもできます。東大寺のお水取りの五体投地は板に身体を打ちつけるという迫力があるもので、走りの行法では時を超えんと堂内を走りますし、超絶早口なお経も唱えます。西大寺とは本当に対照的です。

 なにかとスピードが求められる現代に、このように「ゆっくり」を極める法要の場に身を置くことはなかなか得難い体験になるのではないでしょうか。

 しかしどうでしょう、飛行機が本当はマッハのスピードであるのにもかかわらずゆっくりと空を渡っていくと見えるように、また、高速回転するヘリコプターの羽が止まって見えるように、密教的空間の中で、実はものすごい早さや回数を表現しているのではないでしょうか。中世の人はそんな速さの表現を知っていたのかもしれません。

 外に出ると、明るい月が東塔跡の基壇を照らしていました。法要の余韻に浸り、現実の世界に戻ることを惜しみつつ帰るには、西大寺の駅はあまりに近いのでありました。

加持をされた清らかな土砂。

 本尊のご宝前にて加持された清らかな土砂は、授与品として頒布されています。

 土砂といってもどんな土砂なんでしょう? 一袋もとめてみました。小さな紙の袋にはさらさらとした砂がはいっていました。清らかな砂はなんともありがたく、撒かずに大切にガラスの小瓶に移し自身のお守りにしました。

真言律宗総本山 西大寺
アクセス 近鉄大和西大寺駅下車 南西徒歩すぐ
URL http://saidaiji.or.jp/

光明真言土砂加持大法会
会期 毎年10月3日~5日
所要時間 約1時間半
※提灯たたみと光明真言行道があるのは3日の19:00~、4日の4:00~、14:00~、19:00~、5日の4:00~

中田文花(なかたもんか)
日本画家。描く事で仏教や日本の伝統文化を伝える。院展、万葉日本画大賞展など多くの公募展に入選。平成23年東大寺にて得度、在家尼僧となる。薬師寺機関紙挿絵、知恩院機関紙表紙絵を連載中。趣味:短歌、舞楽、龍笛、茶道。
ホームページ「文鳥寺画房」 http://bunchoji.com/
Twitter https://twitter.com/nakatabuncho

Column

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大人になったら東大寺でお土産を売る人になりたかった――お寺好きがこうじて尼僧になった関西在住の日本画家・中田文花さんが、関西の伝統文化と美の世界を分りやすく案内します。

2015.10.02(金)
文・撮影=中田文花