ボトルワインをシェアできるのがうれしい!

アランチャがチャコリを勢いよく注ぐ。ボトルを傾けたまま次のコップへ。当然こぼれるけれど、それがサン・セバスチャンのスタイル!
チャコリで「オサスナ!(バスク語の乾杯)」。ピンチョス・ハンティングのスタートだ。

 ホテルを出て市場の前を通り、旧市街へ。細い路地にバルが軒を連ねるサン・セバスチャンの神髄だ。最初に入ったお店はフェルミン・カルベトン通りの「ゴイス・アルギ」。小さくて明るい雰囲気のお店だ。ここで、アランチャが、大ぶりのコップに、白ワインのようなものを高い位置から注ぎだした。

 「これがチャコリ。こうやって注ぐと香りが立って美味しくなるのよ」と。ボトルを傾けたまま隣のコップへ。こぼれてもお構いなしの豪快さ(笑)。チャコリというのは、バスク地方の白ワインで、若くてフルーティ。ワイングラスではなく、コップで飲むのがサン・セバスチャンスタイル。アルコール度数は9~10度程度だ。

「ゴイス・アルギ」の、アランチャのイチ押しはエビの串焼き。小さなベーコンが挟んであり野菜のソースがかかっていて、1串でシーフードと肉と野菜のハーモニーが楽しめる。
ピンチョスの定番、酢漬けの青唐辛子とアンチョビの串刺し。「ゴイス・アルギ」ではスモークアンチョビを使い、スモークサーモンをプラスしている。
こちらもバルの定番メニューのひとつ、青唐辛子の素揚げ。オーダーが入ってから揚げるので熱々だ。粗塩が素材の味と香りを引き立てている。

 まずは乾杯してからいよいよピンチョスに。どのバルもあらかじめカウンターの上にピンチョスを並べているけれど、アランチャは、「おいしいものは壁のメニューに書いてあるから、私は並んでいるものはほとんど食べないわ」という。

 スペイン語だしオーダーが難しそうと思うかもしれないが、そこは美食を観光の柱としている町。ほとんどのバルで英語のメニューを用意している。アランチャがオーダーしてくれた3品はどれもチャコリによく合う絶品だった。

Goiz Argi(ゴイス・アルギ)
所在地 Fermín Calbetón Kalea, 4, 20003 Donostia, Gipuzkoa
電話番号 +34-943-425-204

左:19時を過ぎたというのにまだまだ明るい。路地には美食を求めてたくさんの人が歩いている。
右:バルの外にはテーブルがあるが、ほとんどのバルではイスはなく、立ったままピンチョスを楽しむというスタイル。時間が早いのでまだ人が少ない。

 次は、3軒ほど隣にある「バル・スポルト」へ。「えっ? ココ?」と参加者たちが驚くと、「ここにも食べてほしいモノがあるの」と、早速あれこれオーダーしている。

「バル・スポルト」の店内。まずはカウンターで飲み物をオーダー。ピンチョスはオーダーしてもいいし、お皿をもらってカウンターの上の好きなものを取ってもいい。

 出てきたのはぷりぷりのイカ。店の外にあるテーブル(イスはない)に載せて、今度はルエダ地方の白ワインと合わせる。

 参加者が8人なので、ちょうどワインボトルが1本。それぞれのお店で、オーダーしたピンチョスに合うスペインワインを、アランチャがセレクトしてくれる。ひとりではボトルワインは無理なので、これがピンチョス・ハンティングのいいところ。

軽く焼いたイカにバルサミコ酢とパセリとガーリックのソース。ぷりぷりの食感の火の入れ具合といい、バルサミコ酢で酸味をくわえたソースといい、一流レストランのような味!
イカの唐揚げ。食材の鮮度がいいうえに揚げたてでカリッとしている。何個でも食べられそう!

 会計を済ませたアランチャが、「次のお店はもう少し先」と笑いながら言った。さて、次のバルへ!

Bar Sport(バル・スポルト)
所在地 Fermín Calbetón 10, 20003 Donostia, Gipuzkoa
電話番号 +34-943-426-888

2015.09.22(火)
文・撮影=たかせ藍沙