ご当地のお楽しみ その3
「伝統の小田原提灯が館内を幻想的に照らす」

山崎さんの工房にずらりと並ぶいろいろな小田原提灯。

 廊下に並ぶ灯りとゲストが火を着けて持ち歩く「小田原提灯」を作った、小田原ちょうちん山崎の山崎勇さんを工房に訪ねて、提灯作りについてうかがった。

――「星野リゾート 界 箱根」では、夜、提灯をぶら下げて歩くのですが、もともと小田原提灯は携行用だったとか。どうやって作るのですか?

「箱根は、東海道の宿場町。それで小田原提灯は、江戸時代に旅人がたもとに入れて携帯するのに便利なように、畳んだ胴の部分が蓋に収まる独特な形をしているわけ。昔は、小田原から箱根の山を越えるには必需品。半紙と違って厚みのある手すきの和紙でできていて、この骨組みの部分は別の人が作るという分業になっている。デコボコの紙の上に、すわりがよいように太字の文字を描くのだけど、書道のように一気に書くのではなく、フチを取って描き上げていくデザインのような文字だね。それ以外にも紋や絵柄などもあるよ」

左:提灯作り40年の山崎勇氏。忙しい時で1日10個ぐらいの提灯を作るとか。
右:字を書くのではなく、デザインを仕上げるように描いていく。

――何年ぐらい提灯の文字を描いてらっしゃるのですか?

「もう40年ぐらいになるかな。提灯作りは専業ではなく、実家の鉄工所をやりながらやっていたんだ。私は3代目のところに婿養子で入っていて、先代も提灯は唐傘作りなどと一緒にやっていたみたいだが、急に亡くなったので継ぐのはたいへんだった。上手に出来た提灯の型を取って描いたりしてね。最近は、小田原提灯を作る人も高齢化で減って、小田原ではたった2軒になった。今、息子が曲げの部分を手伝っていて、字を描くのは練習中だね」

――いろんな大きさのものがありますが、小田原提灯は、どれくらいもつのですか?

「小田原提灯は、油を引かなければ50年でももつ。子供の名前を入れて記念にとか思い出にということで小さなものの依頼をされることもあるし、お祭り用に大きなものも作る。小田原駅にある大提灯もうちで作ったものだよ」

「星野リゾート 界 箱根」の廊下を照らす小田原提灯。手持ちの提灯には火を着けたロウソクを入れて。何とも風情がある。

 昔から使われてきた箱根の伝統の品が飾る「星野リゾート 界 箱根」。心地よさの中に、日本の文化の深みを感じる宿である。

星野リゾート 界 箱根
所在地 神奈川県足柄下郡箱根町湯本茶屋230
電話番号 050-3786-0099(界予約センター)
URL http://kai-hakone.jp/

小野アムスデン道子 (おの アムスデン みちこ)
ロンリープラネット日本語版の立ち上げより編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するトラベル・ ジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。
Twitter https://twitter.com/ono_travel

Column

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2015.08.04(火)
文=小野アムスデン道子
撮影=山元茂樹