LOVE:鴨汁せいろ
体の芯からあたたまる土鍋仕立ての鴨汁そば

下目黒|紫仙庵

 引っ越しといえば、そばである。本当は、ご近所に「細く長~いお付き合いを」というご挨拶の意味があるようだが、引っ越し作業をしていたら自分ですごくそばが食べたくなった。物件を紹介してくれた不動産屋さんと近所を車で一周したときに、「こんなところにお店が!?」という場所にそば屋さんがあったことをしっかりと覚えていたので、未開封のダンボールそっちのけでそば屋さんに走る。

引っ越しそばを食べなくちゃと思い立ち、出会ったおそば。

 道もうろ覚えだし、店名は見てもいない。久しぶりに手探りの状態でそのそば屋を探しに出掛けた。なかなか心細くて、3歳で人生初の引っ越しをしたときに、まだ敷地内で作業をしていた職人さんたちに「差し入れをしたい!」と思い立ち、ふらりと出掛けて当然壮絶な迷子になったときの気持ちがまざまざと甦る、住宅街徘徊……。

「予約をしていない」と言ったときの「おやおや」という空気から、人気があることが伝わってきた。でも、すんなり入れて、なんと幸運。テーブル数席と座敷があり、座敷の方は大人数の集まりが催される準備が万端。ほかのお客様もとても静かで、客層がいい! 外の住宅街も当然静かなので、ついひそひそ声で話してしまうほどひっそりしている。

クリームチーズの味噌漬け。こういう小さなおつまみをピシッと美しく出してくれるとうれしい。店主の人柄が出ますね。

 さて、「そば屋で呑む」というほど大人な行為は私にはまだまだ。日本酒を1合だけと、おつまみを少々注文して、真似っ子してみる。ワンコインおつまみコーナーがあり、そこからクリームチーズの味噌漬けをいただいた。ちびちび食べるのには十分な量だ。お箸の先にちょびっとつけてペロッと舐めると、ねっちりまったり。クリームチーズが見事な酒肴に化けていた。

スコーンかと思う美しいさつま揚げ。ひと皿で、たまねぎ主役、きのこ主役の2種。

 テンションがさらに上がったのは、さつま揚げ! まるでスコーンのようなふっくらとしたいでたちに見とれることしばし。「さつま揚げです」と言われなければ、なにか別の料理名を考えてしまいそう。揚げたてあつあつ、中はふくふく。生姜醤油(醤油がまた、そのまま舐めたいくらい美味!)で熱いうちにいただいた。

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2014.12.24(水)
文・撮影=北條芽以