綺羅星のようなオリオン書房

現代ロシア文学の作家、ヴィクトル・ペレーヴィンに焦点を当てる。

 文芸でも、現代日本の小説だけでなく、評論も、エッセイも、詩歌も、外国文学も、しっかり置いている。辻内さんは、「新しい発見がある本屋」というよりも、「あると思って行く本屋」と言われた方がうれしいのだとか。広大な文学のエリアで、たとえばロシア文学のファンが、「ペレーヴィンがあると思ってノルテ店に来たらあった」と言ってもらいたいとも。こういう信頼関係を築いていくのはすごいことだと思う。

 フェア棚も、単に売れ筋を追ったものではない。誘拐結婚を追った報道写真パネル展、ディズニーランドで初めて同性婚の結婚式を挙げたカップルのエッセイ集を軸にしたLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)フェア、アジア関連書を出版する社会派出版社のフェア、すぐには反応が出にくい硬派なものでも、時間をかけてじっくり売る。

LGBTのコーナー。

 徹底してニーズに応えることを追い求めた結果、充実した、しかも個性的な品揃えを持つ書店になった。だが、ノルテ店にも弱点はあるらしい。たとえば、ファッションビルに入居する系列のルミネ店ではベストセラーリストにあがるモデルさんのエッセイ集とか、アートでファッショナブルな写真集とかは、ノルテ店ではほとんど売れない本もあるという。得意じゃない分野については、どうしても品薄になりがちだから、お問い合わせいただいても品切れということになる。そういうときには、立川駅周辺だけでも数店舗ある系列店に積極的に問い合わせ、取り寄せ、紹介する。オリオン書房全体がひとつの大きな書店のように考えているとのこと。

 大規模書店だけど、とっても個性的。その品揃えを支えるのは、それぞれ輝きを放つ、まるで綺羅星のようなオリオン書房の店たちだったのだ。

辻内千織さん、『ゼバスチアンからの電話』とともに。

【CREA WEB読者にオススメ】
 辻内さんが最近力を入れているのが、ヤングアダルト小説。CREA WEB世代にもオススメとして一冊あげていただいたのは、ドイツの作家、イリーナ・コルシュノフの『ゼバスチアンからの電話』(白水社)。母と娘の葛藤を描いて、オトナ目線でも楽しめる作品になっている。

オリオン書房ノルテ店
所在地 東京都立川市曙町2-42-1 パークアベニュー3階
営業時間 10:00~21:00
URL http://www.orionshobo.com/shop/5.html

[取材後記] 週末旅の楽しみ方~自転車に乗って立川へ

「週末の旅は本屋さん」、東京近郊ならできれば自転車で行きたい、ということで梅雨の晴れ間を狙って、立川まで足を伸ばしてみた。以前訪れた隆文堂のある西国分寺を通過、立川まで来た。立川基地の跡地に作られた昭和記念公園は、全長14キロのサイクリング専用コースを持つ、広大な国営公園である。入場料(410円)がかかるが、心おきなく自転車を走らせられるコースは貴重で、早速走ってみた。サイクリングコースは、歩行者路としっかり切り分けられており、一方通行、幅も路面もよく、安心して走れる。木陰が直射日光から守ってくれるのもありがたい。レンタサイクルもあり、家族や友人でタンデム車(二人乗り用自転車)に乗るのも楽しいだろう。(外部リンク)。

昭和記念公園。梅雨の晴れ間、広々とした芝生が気持ちいい。

 広々とした芝生が広がる広場、木陰、庭園、スポーツ(ペタンクやホースシューズ、ご存じですか?<詳しくは外部リンク>)やバーベキューもよいが、おやつと飲み物を持ち込んで、木陰で本を読むのもいい。そんな昭和記念公園へは、立川駅北口から徒歩で10分ほど、自転車乗りの方は、マイ自転車で行くのがお勧め。

小寺 律 (こでら りつ)
本と本屋さんと、お茶とお菓子(時々手作り)を愛する東京在住の会社員。天気がいい週末には自転車で本屋さん巡りをするのが趣味といえば趣味。読書は雑読派、好きな作家は、小川洋子さん、宮下奈都さん。

 

Column

週末の旅は本屋さん

新幹線や飛行機に乗らなくても、いとも簡単に未知のワンダーランドへと飛んでいける場所がある。それは書店。そこでは、素晴らしい知的興奮に満ちた体験があなたを待つ。さすらいの書店マニア・小寺律さんが、百花繚乱の個性を放つ注目の本屋さんへとナビゲートします!

 

2014.06.28(土)
文・撮影=小寺律