風俗業であり、人前で裸を晒す仕事ではあるが、ひもを切ったタンポンを突っ込めば生理中でもステージに立つことはできる。妊娠していても、産後すぐでも、衣装で腹を隠せばなんとかなる。ステージから母乳を飛ばす踊り子もいた。さすがに最近では見ないが、楽屋に乳飲み子を連れてくる踊り子も珍しくはなかったそうだ。育児休暇や生理休暇なんて概念の全くない職場は、ほとんど昭和のまま平成を終え、令和の時代を迎えていた。

 

踊り子デビューから数年間は正反対の世界で生活

 踊り子と並行して勤めていたのは、「女性のための本屋」というコンセプトで生まれた、日比谷の書店だった。フェミニズムの棚が充実し、お客さんもスタッフもほぼ女性という、特殊な環境だ。そのため、生理で辛い日は無理せず休もう、子供ができたら育児休暇を取ろう、という風潮があり、そのことを当たり前と思える、女性にとって天国のような職場であった。実際に生理痛がひどいスタッフは、毎月必ず欠勤していたし、出勤途中で貧血になった人がいれば、遅れて出勤することを許可するのではなく、安全に帰宅するように、上司が諭した。

 それに対し、踊り子は4年近く続けているが、生理なんかで休む人は見たことがないし、いかなる理由でも、遅刻や欠勤をしたら共演の踊り子全員に「落とし前」として商品券などを用意しなければならない。人身事故に巻き込まれても、親が死んでも、落とし前だ。郷に入っては郷に従えというが、こればかりは未だに納得がいかない。踊り子デビューから数年間は、正反対ともいえる世界に、並行して身を置いていたのだ。

 ストリップ劇場は、ステージに女性が立ち、客席に男性が座るものだ。昨今では女性客も増えたが、だからといって、女性顧客を増やすために男性ストリッパーがステージに立つかというと、決してそういうことはない。お客のなかには、女装をした男性や、心が女性の男性もちらほら見かける。現在のストリップ劇場には、単純に性の対象としてだけではない視線が混在しているのだ。

2024.04.17(水)
出典元=『週刊文春WOMAN2024春号』