それがはっきりわかるのは、魔女が修行中に着る黒い服についてのコメントだ。

 旅立つ日、黒い服についてキキが「せめてコスモス色ならいいのにね」と漏らすと、コキリは「昔から魔女の服はこう決まってるのよ」と諭すように語る。魔女ということを抜きにしても、思春期の娘と母親の間にありそうな視線の違いであり、会話だ。

 

「黒は女を美しく見せるんだから」

 一方、おソノは、パーティーに着ていく服がないとためらうキキに対して「あら、そんなこと気にしてるの? それとってもいいよ、黒は女を美しく見せるんだから」と声をかける。結論は同じ「黒い服」なのだが、おソノのほうは、“話の分かる親戚のおねえさん”のような距離感なのだ。

(2)絵描きのウルスラ

 一方、森の中の小屋に住んでいる絵描きのウルスラは、キキにとってすぐ上の“先輩”といった存在だ。映画はキキの「空を飛べること」とウルスラの「絵を描くことができること」を重ね合わせ、悩むキキのちょっとだけ先を歩いている人物としてウルスラを描く。

キキとウルスラの声は同じ声優が演じている

 そんなウルスラだからこそキキは、素直に悩みを打ち明けることができる。ウルスラの小屋で、ランプの灯りに照らされながら語り合うふたり。学生時代に、先輩や友達の部屋でそんなふうに悩みを語り合った経験を持っている人も多いのではないだろうか。

 ウルスラは、キキとダブルキャストで高山みなみが演じている。この配役によって、ふたりが似たような道を歩いている先輩後輩であることが、自然と浮かび上がってくる。

(3)お屋敷に住む老婦人

 先輩はいても、ひとりでコリコの町に来たキキには同年代の友達がいない。思春期特有の自意識の強さも加わって、キキは、偶然知り合った少年・トンボの友達の女の子たちと、打ち解けることができない。

 そんなキキにとって、友達と呼べる関係性を結ぶことになるのが、大きなお屋敷に住む老婦人だ。

2024.04.01(月)
文=藤津亮太