この記事の連載

 いよいよ春の到来。東京にも桜の便りが届く季節になりました。

 都心のオアシス、北の丸公園に位置する東京国立近代美術館では、周囲の桜の開花に合わせて毎年恒例の「美術館の春まつり」が開催されます。

 自然の春を愛でるとともに、美術館で春を探してみませんか?


春を探しに、都心の美術館へお出かけ

 地下鉄東西線・竹橋駅から歩いてすぐ、東京国立近代美術館(MOMAT)は、1952年日本初の国立美術館として開館。19世紀末から今日に至る13,000点以上もの近現代美術のコレクションを誇ります。このコレクションには横山大観や岸田劉生など、日本の美術史に大きな足跡を残した作家たちによる18点の国指定重要文化財(内2点は寄託作品)が含まれており、まさに日本を代表する美術館です。

 今回MOMATを訪れたのは、小説家の一色さゆりさん。東京藝術大学美術学部芸術学科を卒業後、ギャラリーや美術館勤務を経て、『神の値段』『ユリイカの宝箱 アートの島と秘密の鍵』など、アートをとりいれた小説を多数手がけています。

「以前私が勤務していた美術館にはコレクションがなく、常に企画展を開催していました。多くの人が訪れてくれるのはとても嬉しかったのですが、会期が終わってしまうと展示作品が1点も残らないのはやはり寂しくて。だから、コレクションがあって常設展示を行っている美術館って魅力的だなと思いますし、国内最大級のコレクションを持つMOMATも大好きな美術館のひとつです」

竹橋に春を告げる人気イベント「美術館の春まつり」

 MOMATのもうひとつの魅力はロケーション。交通の便のよい都心にありながら、皇居や千鳥ヶ淵、北の丸公園といった緑豊かな環境に恵まれ、春ともなると周辺は満開の桜で彩られるのです。そんな桜の時期に合わせ、毎年開催されているのが「美術館の春まつり」です。

 川合玉堂《行く春》が年に一度、この時期にだけ公開されるほか、春にちなんだ名作が会場のいたるところに登場。前庭にはお花見を楽しみながらドリンクなどを味わえるお休み処が設置され、三國清三シェフがプロデュースするレストラン「ラー・エ・ミクニ」によるキッチンカーも出店。まさにお祭りのような華やかさです。

 「MOMATならではの趣向を凝らしたコレクション展示で、とても面白そうですね」と一色さんも期待でいっぱいの様子です。

2024.03.16(土)
文=張替裕子(Giraffe)
写真=杉山秀樹