森見さんが「東京行くから待ち会しましょうよ」と言いだし、「ほんまかいな。それなら、綿矢さんもお誘いしますか」「ボードゲームしましょう。あかんかったら朝までボドゲ大会ですよ」という流れになった次第です。

 

あの建物は何?

――会見では脱出ゲームと、地獄のUNOもなさったとおっしゃっていましたよね。

万城目 綿矢さんに連絡したら「脱出ゲームはしなくて大丈夫でしょうか?」という返事が来て。「綿矢さんは脱出ゲームとか好きなんですか?」と訊いたら、「やったことありません」って。何やそれと思いつつ、僕が全部予約しました。

 脱出ゲームの場所が、選考会が行われる築地の新喜楽の近所やったんです。僕が「さて、あそこは何でしょうか?」って料亭の建物を指さしたつもりが、綿矢さんは最初、新喜楽の隣の「すしざんまい」のほうを見ていて。なかなか噛み合わなかったです。

――面白すぎます。

万城目 その後、上田さんが遅れて合流して、ルノアールの個室で綿矢さんが持ってきた「UNOアタック」を使って永遠に終わらない地獄のUNOをやり、疲れ果てたら夜の7時でした。時間が経つのが早いというか、直木賞の存在を忘れるというか。あれはお薦めの待ち方です。

――昨日の会見で、最後に「次は森見さんだと、バトンを渡したいと思います」と言って会場の後ろに視線を送られたので振り返ったら、森見さんがニコニコして見守ってらして。盟友同士の交流にちょっと胸が熱くなりました。

万城目 森見さんは会見で質問したかったらしいですよ。「僕もいつか獲れるでしょうか」って。僕は「あと3回くらい無理じゃないですか」と答えたでしょうけど。

「険しき直木賞マウンテン」

――森見さんと万城目さんはそれぞれ、ユーモアと空想力を炸裂させた独自の世界を書かれてきましたよね。万城目さんは最初に直木賞にノミネートされたのが2007年の『鹿男あをによし』(幻冬舎)の時で、今回が6回目でした。

2024.02.06(火)
文=瀧井朝世