アカデミー賞の前哨戦とされるゴールデングローブ賞の各賞の発表が行われ、アニメ映画賞に宮﨑駿監督の『君たちはどう生きるか』が選ばれました。現地時間7日にロサンゼルスで授賞式が行われましたが、宮﨑監督は出席しませんでした。日本作品の同部門受賞は史上初の快挙。これを記念して『君たちはどう生きるか』の作画監督を務めたスタジオジブリのアニメーター・本田雄氏のインタビューを再公開します。

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 本田 ある日、宮﨑さん本人から、「こういうのをやるんです」「本田さんは『エヴァンゲリオン』をやるそうですが、ぜひこっちをやってほしい」と言われた。それが最初でした。最初から答えを迫ってきているような感じでしたね(笑)。

 宮﨑さんはどんな物語なのか、全く説明しないんです。「これは冒険活劇です」とだけ言われました。あまり説明をする人じゃないんです。「絵コンテを見て理解してください」という感じなんです。

 7月14日、宮﨑駿監督(82)の最新作『君たちはどう生きるか』が公開された。引退宣言をした前作『風立ちぬ』以来、10年ぶりの長編で、公開4日間で観客動員は135万人、興行収入は21億円を突破。これは『千と千尋の神隠し』を上回る初速だ。タイトルこそ吉野源三郎の児童向け小説の題名だが、内容はまるで異なる。同書を子供の頃に読んで感銘を受けたという宮﨑監督がタイトルに借用したもので、映画のなかでは主人公・眞人(まひと)がこの小説を読んでいるシーンが描かれているものの、実際には戦時中の日本を舞台にしたファンタジー作品となっている。

 本作の作画監督を務めたのが、本田雄氏(55)だ。20年以上にわたり庵野秀明監督の「エヴァンゲリオン」シリーズを担当してきた名うてのアニメーターで、『君たち』の制作に加わる前には『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の作画監督を務めることが内定していた。だが、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが庵野監督に直談判。ジブリへの“大型移籍”が実現し、ファンの間では大きな話題となっていた。その本田氏が今作について初めてインタビューに答え、2017年に始まった、実に6年にわたる巨匠・宮﨑監督との“真剣勝負”の日々を振り返った。

2024.01.26(金)
出典元=月刊「文藝春秋」2023年9月号