いま挙げたような作品で原画を担当していた梅津泰臣さん、なかむらたかしさんといったアニメーターも好きでした。それで自分もアニメーションで食べていこうと思い立って、高校卒業後、故郷の石川を出て、東京でアニメの専門学校に入りました。

 でも、わりとすぐに学校を中退して、フリーでアニメの仕事を始めたんです。食べていけなくて、近くのゲームセンターでアルバイトもしていましたが、どうしてもアニメ一本で食っていきたかったので、制作会社のアトリエ戯雅に就職したんです。ただ入社後、あまり時間も経たないうちにアトリエ戯雅は倒産してしまいました。正確に言うと、前身のスタジオぱっくという会社に入社したのですが、アトリエ戯雅に名前を変えて、それから半年ほどで潰れてしまったんです。

 小さな制作会社だったんですが、とても上手いアニメーターがたくさんいて、その人たちと一緒に仕事ができたことは、今でも僕にとっての財産ですね。そのなかの1人が今回、一緒に仕事をした山下明彦さんです。アトリエ戯雅に入社した当時、僕もそれなりに腕に自信はあったんですが、年齢が2つくらいしか離れていない山下さんが上手くて驚いたのを覚えています。『君たち』では原画マンとして、鳥の群れが飛び出してくるシーンや、眞人(まひと)が自分の頭に石をぶつけるなど、アニメーターとして力量が試される“重い”シーンを担当してくれました。

 ――『君たち』ではすごい数の鳥が描かれていましたね。

 本田 もちろん、全部手描きです。(前編で)お話ししたように、宮﨑監督は“群衆シーン”が好きなんですよ。コピペなんてしないから、1羽1羽、全部手で描いています。しかも1羽1羽の動きが全部違うし、山下さんはぜんぶ上手い。

 眞人が自分に石をぶつけるシーンも、山下さんが描いた絵でもう十分に良かったんです。そこにドバドバと流れる血を宮﨑さんが描き足した。宮﨑さん自身も「これは死んでしまいますねぇ」と言っていましたが(笑)。まさか30年後に、山下さんと一緒に、スタジオジブリで宮﨑駿作品をやっているとは考えもしませんでしたよ。

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本田雄氏のインタビュー「宮﨑駿監督と庵野秀明監督」全文、およびインタビュー第1弾「宮﨑駿監督との真剣勝負」は、月刊「文藝春秋」2023年9月号、10月号と、「文藝春秋 電子版」に掲載されています。

文藝春秋2023年10月号

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文藝春秋
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2024.01.27(土)
出典元=月刊「文藝春秋」2023年10月号