音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

 さて、2014年2月にリリースされる中から、彼らが太鼓判を押す楽曲は?

【2014年2月に流行る曲】
MISIA「僕はぺガサス 君はポラリス」

第2FMとクラブが支えた90年代のJ-R&Bブーム

山口 2014年1回目の来月流行るJポップは、MISIAですか?

伊藤 はい、日本のディーヴァです。

山口 デビューは1998年ですから、もう15年になるんですね。ブレイクした「つつみ込むように…」を作詞作曲した島野聡を、彼がアーティストとしてやっていた頃からよく知っていて、MISIAデビューに携わった人たちも近しくて、売れていくのを横で見ていた感じなので、思い入れのあるアーティストです。新人の頃から歌唱力はずば抜けていましたね。

伊藤 山口さんのトークイベントで島野聡さんがゲストに出た時(イベント紹介ページ)に、「つつみ込むように…」は元々は自分のユニットのために書いたバラード曲で、ユニット解散後にMISIAと出会えたというお話をしていましたね? やっぱりヒットが生まれる瞬間って、そーいうドラマがあるんだなぁ、と思いました。

山口 興味深い話でしたね、島野秘伝の作曲法も話してくれて、面白かったです。当時は、ジャパニーズR&Bブームと言われていましたね。女性シンガーをディーヴァと呼ぶのもこの頃から始まった気がします。Sugar SoulとかbirdとかACOとか、お洒落なセンスでブラックミュージックをベースに、少し歌謡曲的なメロディを加えるというスタイルでしたね?

伊藤 懐かしいラインナップ。

山口 そんな中でブレイクしたのは、ファッション性を売りしたディーヴァではなく、歌唱力が優れていたMISIAでした。ファーストアルバムが300万枚でしたから、最近では信じられないですね。

伊藤 時代もあるんでしょうが、それにしても破壊的数字!

山口 J-WAVEや大阪のFM802に続いて、札幌NORTH WAVE、福岡cross fmなど、「第2FM」と呼ばれたローカルの新しいラジオ局が若者から強く支持されていた時期と重なりますね。FM局にプッシュされたヒット曲が産まれた時代でもありました。もう一つ、クラブシーンが、日本全体に広がって、人気DJもたくさんでてきて、楽曲が聴かれる場として、活用されるようになった時代でもありました。J-R&Bブームは、第2FMとクラブに支えられていたと思います。

伊藤 へぇ~。

山口 ディーヴァブームは、MISIAが頂点かと思ったら、だめ押しのように出てきたのが宇多田ヒカルでした。流行の勢いって、こういうことなんだなと思ったのを覚えています。

伊藤 そうなんですね。当時、僕はアメリカで学生をしていたので、日本の音楽シーンには疎いのですが、さすがにMISIAや宇多田ヒカルは知っていましたし、凄いシンガーが出てきたなぁって思っていました。

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2014.01.27(月)