パーヴォの指揮がパリ管弦楽団に吹き込んだ新風

『プーランク:スターバト・マーテル、グローリア、他』
パトリシア・プティボン(ソプラノ)、パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)、パリ管弦楽団
\2940 発売中(ユニバーサル ミュージック)

 つい先日、パリ管弦楽団を率いて来日公演をおこなった指揮者のパーヴォ・ヤルヴィ。小柄でスキンヘッド(?)で、眼光鋭いこのマエストロが来日コンサートで聴かせてくれたフランス音楽は、びっくりするほどスケールが大きくて、温かい響きがした(特にサン=サーンスが落涙もの)。パーヴォという珍しい名前をもつ彼はバルト三国の北欧寄りの国エストニア出身で、実の父親(ネーメ・ヤルヴィ)も高名な指揮者。弟のクリスティアンも気鋭の指揮者という音楽家一族の出身なのです。まだ10代だった頃に父親が祖国の作曲家ペルトの曲を演奏会で取り上げたため、旧ソ連の迫害に遭ってアメリカに移住したという、複雑な経験もしている人なの。

 祖国の音楽家の偉大な作品を公の場で指揮したことで、おとうさんが罪びとと同じ扱いを受けてしまった……これは、少年パーヴォにとって大きな心理的事件となったに違いないわ。

 彼がパリ管との来日公演で振ったサン=サーンスの『交響曲第三番 オルガン付き』は、フランスのオーケストラとは思えないほど(色々な意味で)、音楽の官能に溺れない、荘厳な決意に溢れた音楽に仕上がっていた。フランスのオーケストラはフランスらしく……そんなありきたりの先入観が吹っ飛んでしまうほど、未来を感じるユニヴァーサルな音楽を作り上げてくれたんです。

 歴代の名指揮者が音楽監督を務めてきたパリ管で、自分の代になって北欧やロシア・東欧のレパートリーを増やしてきたパーヴォには、過去を塗り替える新しいヴィジョンがあったに違いない。それを再び確認できたのが、最新録音『プーランク:スターバト・マーテル、グローリア、他』だったのでした。

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2013.12.03(火)