質の高いリサイタルで知られる「トッパンホール」

『J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲(シトコヴェツキ編曲)&シューマン:ピアノ四重奏曲』
日下紗矢子(ヴァイオリン)、赤坂智子(ヴィオラ)、石坂団十郎(チェロ)、北村朋幹(ピアノ)
¥2940 発売中(日本コロムビア)

 東京には世界のアーティストがこぞって絶賛するクラシックのホールがたくさんあることを、皆さんはご存知でしょうか?

 ヨーロッパでは古い教会やコンサート専門ではない建物の中で演奏会が行われることが結構多く、緻密に音響設計された東京のモダンなホールは、プレイヤーにとってとても理想的な環境だという話をよく聞きます。内装もシックで、照明デザインも綺麗なホールが多いから、一度演奏しただけで海外のアーティストに「お気に入り」に認定されるホールもあるみたい。思わず世界に日本を自慢したくなる嬉しい事実です。

 文京区に位置する「トッパンホール」も、そんな人気のホールのひとつ。客席数408という中規模ホールながら、オリジナル企画公演の充実度はクラシック・ファンからの評価も高く、この私も年間にしてかなりの数、このホールに通っています。かの永田音響設計による音響デザインも優秀で、特にヴァイオリンなどの室内楽は「弦のトッパン」と呼ばれるほど、質の高いリサイタルが年中行われているんです。

 このホールのライヴ録音シリーズはこれまでにも8枚リリースされているけれど、最新作は若き「トッパンホール・アンサンブル」によるバッハとシューマンのプログラム。それぞれソロでリサイタルを行うことも多いヴァイオリンの日下紗矢子さん(読売日本交響楽団のコンミス=コンサートミストレス、つまり女性のコンサートマスター)、ヴィオラの赤坂智子さん、チェロの石坂団十郎さん、そしてピアノの北村朋幹さんによって構成されており、彼らのライヴ演奏はロマンティックで、信じられないほどデリケートな響きに満ちているのです。

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2013.10.22(火)