2014年は、歌謡曲ブームが到来する!

山口 年末ということで、いろんなランキングが出てきていますが、ユーザーの支持という意味で、残念ながらという保留つきですが、2013年に一番信用するべき指標は、YouTube再生数だと思います。

伊藤 何故、残念ながらなんですか?

山口 YouTubeは、音質とか様々な点で、音楽オリエンテッドなサービスではないからです。動画共有サービスとしてのYouTubeは素晴らしいけれど、音楽専門サービスが負けているのは、残念ですね。

伊藤 ネットサービスだけでなく、音楽業界全体が他から遅れをとっている印象は否めないですねぇ。

山口 でも、ユーザーに刺さったという意味では、オリコンランキングより、ずっとリアルですね。やはり、第1位は、きゃりーぱみゅぱみゅでした(ORICON STYLE)。

伊藤 山口さんの言うとおり、これはこれでオリコンとは違う意味で、純粋な音楽ランキングとは言えない結果ですよね。日本でも早くMost Trusted Music Chartと言えるものが出てきて欲しいです。

山口 最後に2014年のJポップトレンド予測をしたいのですが、どう思いますか? 「TSUKI」は、和メロブームの予兆でしょうか?

伊藤 和メロともリンクするのですが、歌謡曲ブームが間違いなく来ますね。サウンド的にはコンテンポラリーなものであっても、メロディーはしっかりとしていて日本人の心に張り付くような曲。AKB系のアイドルだけでなく、アーティストも歌謡曲テイストのものを歌うようになるので、本当の意味での国民的大ヒットが生まれる年になるかもしれないですよ。

No.1のワールドミュージックは日本の歌謡曲

山口 尊敬する業界の大先輩で、THE BOOMなどのプロデューサーである佐藤剛さんは、最近は、由紀さおりさんのアルバムをグローバルヒットさせましたが、その経験も踏まえて、「No.1のワールドミュージックは日本の歌謡曲だ」とおっしゃっていました。

伊藤 その通りなんですよ。“歌謡曲は古臭い”なんて言っていることが感覚的にもう古い。歌謡曲は世界に通用する我々のアイデンティティであることを日本人は知るべきだと思うなぁ!

山口 米国発のポップミュージックは、白人音楽と黒人音楽の融合がベースです。日本は、洋楽に日本的なセンスを加えて、歌謡曲をつくり、Jポップへと進化させてきました。最近は、他分野と同様に「ガラパゴス化」が行き過ぎているところもありますが、日本ならではのオリジナリティに対して意識的になれば、世界の人々から支持されるポップスはつくれるはずですね。

伊藤 もうすぐ、こういう意味でのガラパゴスという言葉も風化していくと思いますが、今こそが“ネオ・ガラパゴス”の時期。ガラパゴス化した音楽文化の進化のケミストリーが生まれる瞬間、日本のオリジナリティが爆発するのは時間の問題だと感じてます。

山口 50年前にビルボードで1位となった「SUKIYAKI」をテーマにした佐藤剛さんの『上を向いて歩こう』(岩波書店)は、名著です(岩波書店公式サイト)。不朽の名曲の誕生からヒットの軌跡を追いながら、戦後日本のエンターテインメント史を描き出しています。CREA WEBの読者には、是非、お薦めしたいです。

伊藤 いつも「山口ゼミ」(公式サイト)の受講生にも薦めていますよね(笑)。

山口 はい。プロ作曲家を目指すなら必読だよ、と薦めています。でも、音楽ファンなら、誰でも楽しめる内容ですよ。スタジオジブリの会報誌「熱風」で連載されていた続編も書籍化されるようなので、今から、楽しみにしています。

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2013.12.26(木)