●通って食べたい! 種類豊富なバインミー 

 まずは「シウマイのバインミー」。「ベトナムのシウマイは皮に包みません。肉種を作って蒸し、さらにトマト風味のソースで煮込んでいます」と岸本さん。それを軽くつぶして、マヨネーズを塗ったパンに、ダイコンとニンジンのなますやスライスしたキュウリとサンド。スイートチリソースの辛みもポイント。ベトナムの魚醤・ニョクマムが利いたトマト風味のシウマイは、どこか懐かしい味わいです。「ベトナム南部出身の方にとても喜ばれました」と、にっこり。

 「ハムのバインミー」は、プリプリ食感のベトナムのハム・チャールア、ランチョンミートの2種類を使用。「アメリカやハワイ、オーストラリアでバインミーを食べると、ランチョンミートが入っています。各国で暮らす越僑の人をイメージしてアレンジしました」と岸本さん。たっぷりのなます、酸味の利いたマヨネーズ、チリソース、黒胡椒、パクチーなどが混ざり合った混沌とした味わいがクセになります。

 「玉子のバインミー」は、すぐ食べるなら半熟の目玉焼きに、テイクアウトにはオムレツに、と自由自在。日本の玉子サンドを意識して、マヨネーズ多めで、黒胡椒を利かせるのが岸本さんのこだわり。「玉子にベトナム醤油を2、3滴かけると、より現地の味になりますよ」。

 「豚つくねのバインミー」は、“ホーチミンを旅した人にはたまらない一品”なのだそう。現地で夕方になると出る人気の屋台の豚つくねを再現。「コリコリした食感を出したくて、鶏軟骨を加えています」とのこと。準レギュラー化したメニューです。

 他にも、自家製チャーシューを挟んだ「チャーシューのバインミー」、ベトナムらしいハーブの炒め物をサンドする「牛肉レモングラス炒めのバインミー」などがあります。さらに、岸本さんの気まぐれで、様々なバインミーも登場。淡路島の新玉ねぎを使ったり、揚げ魚や小海老を発酵させたベトナムの調味料・マムルックできのこ類を炒めた具があったり、なんと「恵方巻きバインミー」も。インスタグラムをチェックして、遠方から来る客も多いそう。

 岸本さんのこだわりは半端ではありません。「チャーシューのバインミー」に使うチャーシューは、蜂蜜、紹興酒、五香粉に3日間漬け込み、こまめにタレをかけながら焼く。また、塩豚は、10日間、豚の塊を塩漬けしてから塩抜きしてカリカリに焼き上げていると言うのです。「パンに塗るレバーパテも手作りしています。ベトナムでは一般的に使われるマーガリンではなく、酸味の少ないマヨネーズにしています」。

 「バインミーの魅力は、総合栄養食であること。野菜もタンパク質もバインミーで摂れる。具材ひとつひとつに手が込んでいる。パンが脇役なのもいい。バインミー専門店であり続けたい」と岸本さん。「甘系のおやつバインミーも作りたい!」。何度も試作を繰り返して、とびきりのおやつバインミーが誕生するでしょう。楽しみです。

「バインミー83」

所在地 兵庫県神戸市中央区元町通6-5-14
電話番号 070-2685-3064
https://m.facebook.com/83.nakano.hito/
Instagram @banhmi83

Column

そおだよおこの関西おいしい、おやつ紀行

生まれも育ちも神戸の生粋の神戸っ子で、長年の関西での取材経験からおいしいお店を知り尽くしている、ライターのそおだよおこさんが、関西の「今、食べてほしい!」というおやつを紹介します。

2022.07.10(日)
文・撮影=そおだよおこ