■星のや東京(前篇)
国内のみならず海外に至るまで、さまざまなロケーションに魅力的な施設を展開する星野リゾート。その星野リゾートが、今、特に力を入れているのが「ウェルネス」です。
この連載では、バラエティに富んだアクティビティ、そしてオーガニックな食事などが楽しめる、ヘルスコンシャスなステイを各地からご紹介します。
大手町のビジネス街にある
静かな「和」の世界
なんでも手が届くところにある都心で、温泉に浸って、極上の料理を味わい、ゆったり静かに過ごす――。
そんな休日は、なかなかイメージが湧かないかもしれない。でも、それが叶うのなら、これほど贅沢なバカンスはない。
「星のや東京」は、都心でくつろぐことを実現した日本旅館。
旅館=庭と木造平屋という伝統的な仕様を覆す、地下2階、地上17階のスリムな外観は、「塔の日本旅館」というコンセプトにふさわしい。
大手町の高層ビルが並ぶ一角に、「星のや東京」は立つ。
黒い外装はしっくりと周囲になじむが、近づくと江戸小紋をモチーフにしたデザインがあでやかに浮き立ち、日本旅館らしさを感じさせる。
ビジネスマンたちが忙しそうに行き交う通りから一歩館内に入ると、世界は一転。
歳時記を表現した縁台の室礼(しつらい)が目に入り、ビジネス街から粋な江戸の世界へワープしたかのような、不思議な気分になる。
「ようこそ、星のや東京へ。お履物を脱いでお上がりください」。そう迎えられるこの感覚は、まさにニッポンの宿。畳の上を歩けば、イグサの青々とした香りと畳の感触に、ほっとする。
館内に入ったときから客室、温泉、エレベーターまでほぼ畳敷きの廊下は、スリッパは不要。
青々しい香りに心地よく導かれる客室は、伝統の建築様式を大切にした、和の空間だ。ソファやテーブルの重心は低めで、素足でくつろぐにはちょうどいい。
日本家屋のような雰囲気に身をゆだねれば、一気にリラックスモードに。
2019.06.29(土)
文=芹澤和美
撮影=鈴木七絵