■星のやバリ(後篇)
国内のみならず海外に至るまで、さまざまなロケーションに魅力的な施設を展開する星野リゾート。その星野リゾートが、今、特に力を入れているのが「ウェルネス」です。
この連載では、バラエティに富んだアクティビティ、そしてオーガニックな食事などが楽しめる、ヘルスコンシャスなステイを各地からご紹介します。
心身を穏やかに整えてくれる
祈り、瞑想、ヨガ
その地名を「薬」という意味に由来するウブドには、地域に根付いた民間療法が根付いている。
そんなこの地ならではのホリスティックなプログラムが、「星のやバリ」に登場した。
その名も「賢者の養生」。5,000年以上昔のインドで賢者たちが集まって出し合った健康で幸せに生きるための多くの知恵、そしてバリヒンドゥーの人々が実践している養生法を通して心身を調える、滞在型リトリートだ。
スケジュールは、前篇でご紹介した「バリ舞踊美人滞在」の1日を含む、3泊4日。
ゆっくり、じっくり、そして心地よく、ウブドの知恵を授かりながら、心身をリフレッシュしてゆく。
最初は、静かな谷あいで行う「早朝の谷のヨガ」。
かつて僧侶たちがそうしたように、「星のやバリ」が立つ渓谷の下を流れる聖なるプリクサン川のせせらぎを聞きながら、心身を調える。
ヨガを行う前には、バリヒンドゥーの教えに従い、伝統的な腰布のサロンをまとい、敷地内にある小さな寺院にお参りをする。聖なる地へ入るときには欠かせない習慣だ。
お線香に火をつけて、煙で手を清め、花びらを指でつまんで聖水の雫を頭にかけ、お米を額につける……。寺院で施されるそんな一連の儀式に、すっかり神聖な気分に。
これはけっしてイベント的なものではなく、バリの女性は1日に3度、花びらや竹の葉で「チャナン」を作り、神に祈るという。
身体を清めたら、いよいよ聖地へ。
ヨガを行うのは、谷を下ったところにある洞の前。
ヨガで身体をゆっくりと目覚めさせた後、瞑想を行う。最初は川のせせらぎぐらいしか聞こえない。
だが、自分の呼吸に意識を向けているうちに感じるようになるのは、岩に滴る水の音や、かすかな葉擦れ。
日頃、「瞑想なんて雑念だらけ!」という人も、この環境なら集中できるかもしれない。
瞑想を終えた後は、「プライベートヨガ」。
完全プライベートで60分、しっかりと身体をストレッチする。ビギナーにとっては、この時間は少し長いと感じるかもしれない。
でも、しだいにほぐれていく四肢を感じることが大事。緑のなかで、身体は着々と目覚め始めている。
2019.04.28(日)
文=芹澤和美
撮影=鈴木七絵