なぜ日本人は香りを苦手と考えてきたのか?

a 人気シリーズの新作はマテの葉やスイトピーを加えることで、オリジナルに軽やかさをプラス。LOVE,クロエ オー フローラル オードトワレ 50ml ¥9450/コティ・プレステージ・ジャパン

b ブルーベル、スズラン、ジャスミンなどのすっきりとしたさわやかな甘さが魅力。コロン ワイルド ブルーベル 100ml ¥14700/ジョー マローン

c ウッディとムスクをベースにグレープフルーツやローズ、ジャスミンなどを効かせて甘美な大人の女性を演出。ココ ヌワール オードゥ パルファム 50ml ¥13230/シャネル

d イングリッシュガーデンに咲くピオニー(芍薬)からインスピレーションを得た香り。太陽の下、力強く咲くピオニーのフローラルな香りと青々したグリーンの香りを基調に、ローズ、ベチバーなど広がる華やかな1本。ピオニーヴ オードパルファン 50ml ¥13650/ペンハリガン ジャパン

 昔から、香りにおいて日本人は欧米人に“10年遅れをとっている”と言われていた。だから、少しずつその遅れを取り戻しているのかと思いきや、じつはその遅れが今もっともっと広がっているという見方がある。

 事実、80年代はディオールのプワゾンのブームが生まれ、CKのエタニティも一大ブームとなり、CKワンなどのつくったシェアードフレグランスの世界的なトレンドが日本にも押し寄せて、“香りをつけること”それ自体が盛り上がりを見せたのは確か。が、その後縮小傾向に向かったわけで、じつはそうこうするうちに、日本にも“自然派コスメブーム”が訪れ、“アロマテラピー”的なものへ香り志向が動き、“ザ・香水”的な香りへの支持は下降線を辿るのだ。

 先ごろ30代前半の女性に、「わー香水つけてるんだ。でもいい香り、一度香水つけてみたい」と言われてギョッとした。30半ばになる人がそのレベル” つけてることがそんなに珍しい” と正直驚いたのだ。

「それ何の香り?」と聞かないことにも驚いた。「これはシャネルのココマドモアゼルといって……」と無理矢理教えたら、次に会った時、ココマドモアゼルを香らせていた。そして、人にやたらに“いい匂い”と褒められちゃって、香りの威力ってすごいと目をキラキラさせていた。“使わず嫌い”をひとり減らせたと思った。たぶん香りって、褒められないと信用できないものなのだろう。

 日本人は体臭が少なく、人と人の距離が狭く、日本食には繊細な香りしかないから、民族的に嗅覚が敏感だとも言われ、日本人にとって、香りは“ハイリスクなオプション”。だから使わず嫌いが減らないのだ。よって、本当に他人から褒められないと、威力がわからない。本来が人をうっとりさせ、それだけで恋をさせる能力を持った、文字通りの媚薬。使わないと本当に損をするという事実を伝える方法も、男に褒められるしかないのだ。そこで、必ず“褒められる香り”をここにあげてみた。

 私自身が今までいちばんたくさん褒められた香りは、ココマドモアゼルだが、そのココでシャネルのブランドカラーとも言うべき“黒”をテーマに表現したのが、ココ ヌワール。これが重くないのに深く、甘くないのに甘美で、本当に本当に美しい香りとなった。そして日本でダントツのベストセラーを続けるクロエからは、さらにフレッシュに軽やかに甘やかになったLOVE,クロエの新作。ナチュラルな褒められ系の香りを求めるなら、手に取ったベリーを洗練させたような香りがジョー マローンからデビューしている。一方、歴史あるペンハリガンが作ったのは、大輪の花ピオニー。自身が大輪の花になるような手応えをくれるはず。

 従って人から褒められるに決まってる。だから翌日から、あなたはもう、香り好きになっているのだ。

Column

美容ジャーナリスト 齋藤 薫の美脳トレーニング

美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。

2012.10.22(月)

CREA 2012年11月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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