美しく生まれ変わった
州都の博物館へ
「考古学? いやいや、歴史にそこそこ興味はあるけど……考古学博物館に行くほどでは……」なんて方も多いのでは?
シチリア島、つまり地中海の古代の歴史となれば付け焼き刃ではどうにもならないくらい複雑怪奇。
ローマ、ギリシャ、フェニキア、エジプト……物理的にも時間的にもあまりに遠くてピンとこないかもしれませんが、しかし、ものは考えよう。
今回は、州都パレルモのシチリア州立パレルモ考古学博物館を“パレルモ流の楽しみ方”を交えてご紹介!
パレルモ旧市街、マッシモ劇場に近いオリベッラ広場に面して建つパレルモ考古学博物館は、イタリア統一時の法改正で没収された教会財産の一部である修道院をそのまま転用したもので、内部には、修道院時代を偲ばせる優美な回廊や階段が残されています。
最近修復を終え、モダンで機能的な内装となりましたが、漂う空気はかつてと同じ。楚々として、そこにいるだけで心の平穏が誘われる風雅なムードが漂っています。
博物館の創設自体は1814年と古く、パレルモ大学の研究機関として誕生した後、当時の有力パレルモ貴族やシチリア・ナポリ両王国のフランチェスコ1世とフェルディナンド2世のコレクション、イエズス会からの寄贈品が加わり、1860年には“国立博物館”になりました。
19世紀代後半から20世紀にかけて、パレルモ大学長で考古学者、貨幣研究家のアントニーノ・サリナスにより収蔵品はさらに充実。
古代エジプトの「パレルモ・ストーン」をはじめ、シチリア島のセリヌンテやティンダリ、ソルント、ヒメラ、モツィアなどから出土したギリシャ、ローマ、カルタゴの神殿パーツや生活雑貨、ヴェルディのオペラ「シチリアの晩鐘」にインスピレーションを与えた歴史家ミケーレ・アマーリの影響で収集されたエトルリアの資料など、膨大なコレクションはヨーロッパでも最大級であり、古代地中海世界を知るための重要な博物館のひとつに数えられています。
アントニーノ・サリナスの功績を讃え、州立パレルモ考古学博物館は、“ムーゼオ・サリナス(サリナス・ミュージアム)”とも呼ばれています。
文・撮影=岩田デノーラ砂和子