世界の子どもたちに人気のねずみキャラクターといえば、一般的にはミッキーマウスということになるのでしょうが、ここスペインではそれと並ぶくらい、あるいはそれ以上に小さい子どもたちに人気のねずみがいます。

 その名は「ラトンシト・ペレス(Ratoncito Pérez)」、つまりねずみのペレスさんです。子どもの乳歯が抜けたときの風習は、各国いろいろ違いがあるようで、欧米では抜けた乳歯を枕の下に入れておくと、寝ている間に妖精などが訪れて歯の代わりにコインを置いて行ってくれる、というパターンが主流。スペインでは、そのコインを置いて行ってくれるのが、このねずみのペレスさんなのです。

 歯が抜けるという子どもにとって結構ショッキングな出来事を、コイン(もしくはちょっとしたおもちゃなど)がもらえる楽しいイベントに変えてしまうペレスさんは、スペインの子どもたちの間で絶大な人気を誇ります。寝ている間にやってくるのでその姿を見ることはできませんが、子どもの心のなかにはそれぞれが想像するペレスさんがちゃんと存在しているのです。

 そして最近バルセロナでは、なんとそのペレスさんの家が見つかったということで、子どもたちの間で大ニュースとなりました。

ある日、この石壁に小さなドアが置かれたのがすべての事の始まり。現在のドアはすでに2代目。扉脇に乳歯のマークが掲げてあったり、駐車禁止の時間帯が22時~7時となっていたり(子どもたちが寝ている間にコインを届けに出かけるペレスさんの出勤をさまたげないため)と、細かなところにまでさまざまな心配りが。

 実はこれ、とある父娘が、ちょっとした遊び心で始めたのですが近所の人たちの目にとまり、以来、周辺に住む大人や子どもが自発的に少しずつパーツを増やしてきたもの。

文・撮影=坪田みゆき