ここ数年、英国でなにかと注目を浴びているデスティネーション、英国西部に位置するブリストル。前回の「ブリストルの絶景3選」に続き、今回はまさに“今”のブリストルを知ることができるアートシーンを巡ります。

ブリストルの街に広がるアートシーン

ブリストル市の要請により、世界のアーティストがブリストルに集結。巨大な壁画も多数あります。

 英国内で最もインスパイアリングな街とされるブリストルですが、街を歩けば、ビルの壁面に描かれている見事なアート作品の数の多さが、その結果を裏づけます。このストリートアート・ムーブメントに火をつけたのは、なんといっても、いまでは世界に知られるバンクシー。

バンクシーが描いた、『真珠の耳飾りの少女』。

 いまでは、ストリートアートに寛容になり、市の企画で壁画を制作するために海外アーティストを誘致したりもしているブリストル市ですが、1990年代の後半から2010年頃までは、事前許可なく描かれたストリートアートは「風紀を乱す」として、容赦なく消していたそうで、バンクシーの作品も市によって消された例がいくつかあるようです。

左:かつてバンクシーによるアートワークがあったブリストル市役所。(C)Banksy
右:現在のブリストル市役所の、左の写真と同じ場所。
バンクシーが故意に清掃の難しい高い位置に描いたといわれる「Well Hung Lover」。
バンクシーの影響がみてとれるJPSの作品。

 その裏をかくように、バンクシーのその後の作品には、不動産の所有者と相談のうえで足場を組んで建物にカバーをかけ、ビルダーを装ってカバーの内側で、なおかつ清掃の手が届かないように高い位置に描き上げた作品があります。

 また、別のアーティストの作品ですが、地面に落ちている、誰の所有物でもないチューインガムの上に精巧に描かれたイラストなど、ユーモアたっぷりの作品も数多くあります。

チューインガムの上に精巧に描かれたベン・ウィルソンの作品。
ロイ・リキテンスタインのテイストを感じさせるRicht & 45RPMのイラスト。
ホテルの外壁に描かれた、ウォレスとグルミット。ブリストルに拠点を置くアードマン・アニメーションズも「気に入った」とのコメント。さらに今度はホテル側からの正式依頼によりもう1点追加されたのだとか。
左:街中にこんなイラストが溢れています。
右:フランス人グラフィティアーティスト、Blek le Ratのシグニチャー作品である黒いネズミ。

 そんなブリストルのストリートアートをめぐるウォーキング・ツアーは、裏話を聞きながら、隠れた名作まで効率よく見て回ることができておすすめです。

Bristol Street Art Tour
http://www.wherethewall.com/

2018.05.12(土)
文・撮影=安田和代(KRess Europe)