『アウトレイジ 最終章』が賞を独占!

「日本のアカデミー賞は大手映画会社の持ち回りばっかりなのはどうかと思う。みなさんも日本アカデミー賞を取った映画会社を調べてみてよ。いかに大手だけでグルグル回しているかがわかるから。今年は邦画が不作だから、『アウトレイジ 最終章』が目立ってしまった」と今年もビートたけし審査委員長はアカデミー賞への不満を語りつつ、「東スポ映画大賞も華やかになって嬉しい限り」と香取慎吾や長澤まさみらの参加を喜んだ。

 アメリカのアカデミー賞は『シェイプ・オブ・ウォーター』が作品賞を受賞し、日本アカデミー賞も『三度目の殺人』に決まり、映画賞ラッシュも一段落した今日このごろ。

 しかし、日本アカデミー賞の直前、2018年2月25日に、日本の映画界でもっとも重要な映画賞の授賞式が開催された。東スポ映画大賞こと、東京スポーツ映画大賞だ。名前の通り、東京スポーツが主催する映画賞で、世界の北野ことビートたけしが審査委員長を務め、1992年から始まり今年で27回目を数えた。

左:会場で配られた東スポより。東スポ映画大賞は、日本アカデミー賞へのアンチテーゼとして、かつてはビートたけしが自分で選んで自分で受賞するという、大橋巨泉ゴルフコンペ方式だったが、今はSKIPシティ国際Dシネマ映画祭ほか、地方映画祭のメンバーが候補作を選んでいる。
右:オフィス北野からの独立を発表した北野武。やはり独立した新しい地図の3人と映画を撮るなら『アウトレイジ 全員独立』か。真面目に言うと、『兵隊やくざ』をリメイクしてほしい。田村高廣が演じた有田上等兵を吾郎ちゃんで。

 もちろん作品、監督、主演男優、助演男優など主要賞は、北野武監督の『アウトレイジ 最終章』が受賞したのだが、何が重要って、まず私、マダムアヤコを毎年招待してくれる日本で唯一の映画賞なのである。

 ちなみに、カンヌ映画祭や釜山、プチョン・ファンタなど海外からはお呼びがかかるのに(自腹だけど)、なぜか日本の映画祭や映画賞からスルーされてしまうという点では、敬愛する世界の北野と同じかもしれない。同じ足立区出身だし。

『アウトレイジ 最終章』で主演男優賞を受賞した西田敏行と塩見三省。2人とも病後のため杖をついて登壇したが、途中、受賞の順番を間違えていた西田さんは杖を抱えて飛び出して来るほど元気。「漣ちゃん、すいません。あなたがずっと出ていた北野映画に、このまま私がスライドすることになりました(笑)」と、ユーモアをこめて大杉さんを偲んだ。塩見さんは「大杉、俺はこんな体になったけど、もうちょっとやってみるよ」と急逝した盟友に向かって呼びかけた。

 『アウトレイジ 最終章』はシリーズ最大のヒットを記録したし、面白かったのに(1作目の殺し方のインパクトには負けるが、恐怖と笑いの相性の良さを証明するような方法で殺される)、今年の日本アカデミー賞では作品賞など主要賞では候補にすらならず、鈴木慶一の音楽のみが最優秀賞を受賞した。

 さらに重要だったのは、『アウトレイジ 最終章』で助演男優賞を受賞するはずだった大杉漣さんが直前の2月21日に急死し、彼を看取った松重豊が同じく助演男優賞受賞者として登壇したこと。さらにさらに今年の東スポ映画大賞最大の話題は、あの香取慎吾がサプライズで会場に姿を現したこと!

話題賞は、元SMAPの稲垣吾郎・香取慎吾・草彅剛、元日馬富士&貴ノ岩、豊田真由子元衆院議員、と「元」で統一。会場に来たのは慎吾ちゃんだけ。吾郎ちゃんと草彅くんは、『クソ野郎と美しき世界』の撮影のため残念ながら欠席。東スポとCREA WEB、どちらが先に3人全員の取材を出来るのか。なんとしても先んじたい。

 東スポ映画大賞にはこの10年くらい足を運んでいるが、こんなにマスコミが来ているのは初めて見たよ。東スポといえば、週刊文春と同じくらいジャニーズ事務所から嫌われ、オミットされているため、SMAP時代は一切、取材に応じてもらえなかったのだ。それがなんと授賞式に出席したのだから、これは歴史的瞬間だ。Momentだ。

「Moment」は2012年に発表されたSMAP48枚目のシングルで、作詞作曲はサカナクションの山口一郎。TBS系ロンドン・オリンピックのテーマだった。稲垣、草彅、香取の3名は新しい地図として、パラリンピックをはじめパラスポーツ全般をサポートする「雨あがりのステップ」をリリース。全額チャリティになるという(2018年6月30日まで。それ以降は通常販売)。マダムアヤコはその発表の場となったパラ駅伝2018に、たまたま1ファンとして行ってきた。パラ駅伝、最後まで駆け引きがあって結果が読めず、競技としてとても面白かった。唯一、吾郎ちゃんが遠くて残念だったけど。

 香取慎吾が登場したのは、東スポ映画大賞の後半、ビートたけしのエンターテインメント賞でのこと。こちらは18回目で、演芸、芸能の世界の実力者を表彰するもので、東スポ映画大賞が世界の北野だとすれば、こちらは足立区のたけしの賞という感じだ。慎吾ちゃんは、吾郎ちゃん、草彅くんとともに、話題賞に選ばれた。

2018.03.24(土)
文・撮影=石津文子