◆銀座奥田 (銀座)
今夏に新しく生まれ変わった1ツ星の名店
秋だ。
すばらしい食材が揃う季節。無性に日本料理が食べたくなる。
並木通りを入り、目当てのビルの階段を降りる。のれんをくぐった先は、銀座奥田。ミシュラン3ツ星「銀座小十」の姉妹店で、こちらも1ツ星の名店である。
のれんをくぐる瞬間はなんだか緊張するが、スタッフの笑顔に出迎えられ、すぐに和んだ。
あれ? このコラムは、新店紹介なのでは? と思ったあなた、ご心配なく。実はこの夏、料理長を一新。新しい奥田に生まれ変わったということでの紹介だ。夜は、1万8,300円と2万3,000円のコースを提供。今回は、後者をお願いする。
五節句のひとつ「重陽の節句」のある9月。菊を用いて不老長寿を願うことから、別名「菊の節句」ともいえるこの月にちなみ、食前酒には、菊の花びらをひとつまみ。
粋な幕開け。さあ、胃袋も動いてきた。
見事な八寸の登場。
半生の干し子、クエを寝かしたもの、無花果の胡麻和え、棒寿司、春菊のおひたし……などなど、お酒が欲しくなるラインナップ。豊富に揃えているとのことなので、早速お勧めとともに。
カボスに包丁を入れ、菊の形に成形し盛り付け。「重陽の節句」がここにも。
利尻のバフンウニと噴火湾の毛蟹という、なんとも贅沢な組み合わせ。下には、炭火焼きした赤ナスをずんだ風にしたものが。
すべてが一体となり、口のなかで溶けていく。刹那の快楽に酔うばかり。
こちらはステキな個室もあるが、料理人の仕事が見えるカウンター席が好きだ。
カウンターは8席。ほかに個室を3つ用意。
そして、目の前の彼が、新料理長の荻野聡士さん。清々しいイケメンである。
ご覧のとおりの若さだが、料理人としてのキャリアは13年目。
子どもの頃から料理に興味をもっていた彼は、高校を卒業と同時に京都の吉兆で修業を開始。そして、銀座小十に移って5年目。二番手として活躍していたところ、この7月、奥田の料理長に抜擢されたのだという。
あまり知られてはいないが、実は、片岡鶴太郎氏の三男である聡士さん。父の芸術的センスのDNAは、料理に形を変え受け継がれているようだ。
そんな話をうかがっているうちに次の料理が運ばれてきた。お待ちかねの椀もの。日本料理のお楽しみのひとつ。今日は、アマダイ、蓮根もち、生のキクラゲを菊花椀仕立てで。まずはひとくち。利尻の昆布に鰹を合わせた出汁の奥深さよ。
吉野葛仕立てにし、とろみをつけてある。
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- 文・撮影=Keiko Spice
写真協力=Ukyo Okada - category
