◆SOUTH LAB 南方
[錦糸町]

中華料理とワインのマリアージュ
野菜のおいしさにも開眼

 最近はハワイにしか行っていないが、初めての海外は香港だった。日航ホテルで初めて鳩を食べた。

 そこからはまりにはまって、香港と名のつくガイドブックは片っ端から買いまくった。そんなある日、書店で見つけた写真集にくぎ付けになる。

 フォトグラファーは菊地和男。写真だけでなく、食にも精通する大家である。

 あれから30年、まさか菊地先生プロデュースの店で、鳩を食べることになるとは!

 2019年6月4日(火)にオープンしたその店の名前は、SOUTH LAB 南方(サウスラボ・みなかた)。

 広東・潮州を軸に、タイやベトナム、プラナカン(ニョニャ)をリスペクトした料理を、ワインとともに愉しむ、というのがコンセプト。

 菊地先生といえば、ワイン。ナチュールを中心に、ボトルで4,000円から10,000円のものをラインナップ。

 グラスは10種ほどで、900円から1,300円。ペアリングも予算に応じてやってくれるとのこと。

 ビールはハートランド。ノンアル派のことももちろん考えていて、おいしいジュースと、茶人でもある菊地先生が選んだ中国茶の水出しが用意されている。

 料理は、6,500円、8,000円、10,000円コースを用意(豪華食材希望の場合は、金額UPでいかようにも)。今回は、10,000円のコースをお願いした。

 まずはスープが登場。韮王揺柱羹。具は、黄韮と貝柱。

 「魚の浮き袋の細切りを入れたかったけど、いいものがなくて」と代用で入れた豚ガツの細切りがまたいい塩梅。

 パクチーサラダ。赤ワインビネガーとクミンに、タイ産のエシャロットを加えたドレッシングが、“サウス”な風を運んでくる。

 それにしても驚いた。葉はもちろん、揚げた根の部分がべらぼうにうまいのだ。

 野菜の大部分は、希少なアジア・西洋野菜を飲食店向けに栽培している株式会社テラ・マードレのものだという。

 「今日はほかにも野菜は出ますか?」「うん、出しますよ」。期待が高まる。

 「ちょっとこれつまんでて」と、各自に自家製のXO醤が。とがったところがない、上品な味わい。

 シェフは香港のアイランド シャングリ・ラ「夏宮」の出身というのも納得だ。

 次の逸品にも驚き!  鶏子戈渣ではないか!

  新鮮な鶏の白子を集めてペースト状にし、衣をつけてさっくりと揚げた古典的な広東料理。お金が取れない割に大変手間のかかる、料理店泣かせの逸品。

 「これ、香港・湾仔の福臨門でいただいたことがありますよ! 懐かしいです」と言うと、「そりゃあそうさ」と菊地先生。

 シェフは銀座の福臨門でも厨房を任されていた辣腕だったのだ。

 生煎蝦餅は、海老の練りもの、炒め揚げした一品。

 タイ料理のトート マン プラー(さつま揚げ)にも似ているが、こちらのほうが繊細。タレの類を必要としない完成された味。

2019.06.17(月)
文・撮影=Keiko Spice