「イギリスの食事は……」というのも今は昔。優れた食材が揃う南西部、デヴォン地域には腕利きのシェフたちが集う。彼らの拠点を訪ねれば、英国の食に対する偏見が吹き飛ぶはずだ。

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“ガストロパブ”と呼ばれることを
シェフが好まぬ納得の理由は?

◆The Treby Arms
(ザ・トレビー・アームズ)

マカレルとピクルスの前菜は、海草の香りで始まり、ホースラディッシュが後味を引き締めるという構成。料理はすべてテイスティングメニュー(70ポンド)の一品。

 英国各地で盛り上がっているのがガストロパブ。この“美食パブ”隆盛の理由については諸説あるけれど、2007年に公共の建物内での喫煙が全面禁止になって以来、方向転換を迫られたパブが料理に力を入れるようになったという説が有力だ。

 10年にオープンしたザ・トレビー・アームズも、昔ながらのパブの奥にレストランが控えている。昨年、ミシュランの星を獲得したけれど、ヘッドシェフのルーク・フィアロン氏は、「正直、星の数を増やすことについてはあまり興味がないんだ。もっといい料理、もっといい食材を追求したい」と語る。

左:2階のレストラン。パブは1階にある。
右:タピオカのフライとゴートチーズのアミューズ。ブラックオリーブとマッシュルームのパウダーが味に奥行きを与える。

 マカレル(サバ)とピクルスの前菜が入った器を手に取ると、海草の磯の香りがふわっと広がる。聞けば、香りが立つような器を選んだとか。

 タピオカのフライとゴートチーズを組み合わせたアミューズは大地をイメージしたもので、見た目も味も斬新でハッとさせられる。

左:メインはカレイの一種ターボット。一度蒸してから衣を付けて揚げ、“外カリッ、中フワッ”を実現。この辺りの魚はロンドンやパリにも卸されるという。
右:チェリーボンボンなどのチョコレートも自家製だ。

 帰り際、申し訳なさそうに「ガストロパブと呼ばれるのは好きじゃないんだ。パブとレストランは明確に分けているからね」。芸術家肌のこだわりのシェフだとお見受けした。

デヴォンに生まれ育ったルーク・フィアロン氏は、高校卒業後に地元のパブやレストランで修業を積み、ザ・トレビー・アームズへ。「ローカルにこだわらず、いい食材であればなんでも使いたい。ワサビやユズも試しています」

The Treby Arms
(ザ・トレビー・アームズ)

所在地 Sparkwell, Plympton PL7 5DD
電話番号 01752-837363
営業時間 12:00~15:00/18:00~23:00(金~日曜 12:00~23:00)
定休日 月・火曜
http://www.thetrebyarms.co.uk/

●デヴォン地域
アクセス ロンドンからデヴォンの中心都市エクセターまで電車で約2時間30分

Feature

英国の美食エリア
デヴォンのレストラン3選

取材・文=サトータケシ
撮影=小野祐次
コーディネイト=小川ヒギンス美穂子
協力=英国政府観光庁