英国、食の底力 イングランド南西部の美食を巡る

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ひとりの女性が石を運んで築いた舞台
英国南西部の絶景ポイントで観劇を!

ひとりの女性が自らの手で築いた
海辺の野外劇場

ミナック・シアターは、舞台の向こうに真っ青な海と空が広がる、絶景の劇場です。地元の青少年劇団がリハーサル中。

 コーンウォールの西端にほど近いポースカーノに立つミナック・シアターは、ステージの向こう側が真っ青な海、という絶景ポイントにあります。現在でも、年間8万人の観客動員数を誇り、劇場見学のために訪れる人の数は15万人という、この人気スポット、もともとは演劇好きの、あるひとりの女性が、自らの手で石を運んで築いたというから驚きです。

左:自らの手で岩を運ぶロウェナ・ケイド。
右:ビーチから運んできた砂を使ったコンクリートで柱を成形するロウェナ・ケイド。

 その女性の名前は、ロウェナ・ケイド。劇場のある崖の上にあるミナック・ハウスに住んでいた彼女は、1929年に近隣の土地で野外劇「真夏の夜の夢」の衣装、舞台装置、リハーサルなどを手掛け、大成功を収めます。

 1920年代から30年代にかけてのこの地では、アマチュアによる演劇公演は、人気エンターテインメントのひとつでした。翌年の再演につづき、2年後にはミナック・ハウスの庭で「テンペスト」を上演。同時に、庭の向こう側にある崖こそが劇場にふさわしいロケーションだと気づき、彼女の庭師と地元男性、そしてロウェナ本人の3人で劇場造りに取り組みます。

 強風の吹く厳しい気候のなか6カ月間にわたって、文字通り手作業で岩を運び、1932年の夏にはステージが出来上がりました。新生ミナック・シアターで最初に上演されたのは、「テンペスト」です。

1932年のミナック・シアターのこけら落とし公演「テンペスト」の模様。

 ロウェナはその後も、戦争のために中断された時期をのぞき、コンスタントに劇場造りの作業をつづけました。80代になっても手にスコップを握り、熱心にメンテナンス作業をする白髪の彼女の姿を、多くの訪問者や劇場関係者が目撃しています。

人生をかけて自分の愛する劇場を造り上げたロウェナ・ケイドというひとりの女性の生き方は、現在を生きる女性にとっても刺激的。併設されているエキシビション・センターでは、ロウェナ・ケイドの人生についても知ることができます。(C)Cary Wolinsky

 ロウェナは90歳の誕生日を目前とした1983年に亡くなりましたが、メモリアルである御影石が劇場のちょうど中央あたりに設置され、そこには「ROWENA CADE CREATED THIS THEATRE」の文字が刻まれています。

劇場に設置されたメモリアル。「ロウェナ・ケイドがこの劇場を創りました(ROWENA CADE CREATED THIS THEATRE)」の文字が。

 公演が行われるのは、春から秋口にかけてのみですが、劇場の見学は一年を通して可能です。運がよければ、リハーサルをしている地元劇団の姿を見かけることも。夏場は激しい交通渋滞が予想されるエリアなので、時間には余裕を持ってどうぞ。

座席には、いままで上演された演目が刻まれています。

Minack Theatre(ミナック・シアター)
所在地 Porthcurno, Penzance, Cornwall TR19 6JU
電話番号 01736-810181(チケット販売所)
http://www.minack.com/

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2017.06.04(日)

文・撮影=安田和代

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