知る人ぞ知る美食の国、マレーシア。この連載では、マレーシアの“おいしいごはん”のとりこになった人たちが集う「マレーシアごはんの会」より、おいしいマレーシア情報をお届け。
「パイナップルはソースで食べる」
これが、果物天国マレーシアの常識です
初めて出会ったときは、驚きをこして衝撃的でさえあった「ロジャ/Rojak」。果物が何やらあやしげな黒いソースであえてあり、匂いも少々ぷ~ん。フルーツサラダ、とでもいいましょうか、パイナップル、グアバ、パパイヤなどのカットフルーツを特製ソースにからめて食べるおやつです。
どうしてこんな果物の食べ方をするのかというと、マレーシアが果物天国だからです。道路脇にライチによく似たランブータンの木が生い茂り、ラグビーボールぐらいの大きなパパイヤがたったの100円で売られ、スーパーでは生のココナッツが山積みに。
そのためマレーシア人は、朝ごはんに果物、小腹がすいたら果物、デートで果物、映画を見ながら果物……と、いつでもどこでも果物とともに生活しています。
そんな果物生活のなかでうまれたのが、果物のさまざまな食べ方です。甘さをひきたてるために塩や砂糖をまぶしたり、干し梅や唐辛子のパウダーをまぶして味つけしたり、衣をつけて油で揚げたり。そしてこのロジャも、マレーシア人がこよなく愛する果物のおやつなのです。
ロジャは、パイナップルやグアバなどの果物に、とろみのあるソースをたっぷりからめたもの。ときにキュウリ、センクアン(ナシや大根のような食感の野菜)や、薄焼きのパリパリせんべいのようなものを合わせることもあります。
このソースの味が、かなり独特。田楽味噌のようなコクのある甘さで、それと同時に唐辛子のピリッとした辛みがあり、発酵海老の香りがぶわっと鼻をくすぐる。そこに果物の甘酸っぱさが混じりあって、なんとも説明が難しい、摩訶不思議な味なのです。
正直に言うと、はじめて食べたときはビミョーと思ったのですが、何度か食べているうちにじわじわハマっていき、気がつけば「この屋台はロジャがある!」と飛びつくように。
ほかの料理にはない唯一無二の味なので、また食べたくなるし、果物での水分補給とともに、塩分や糖分も摂取できて、とくに暑い日にロジャを食べると体が喜ぶ気がするのです。ちなみに、タイやインドネシア、シンガポールでも同じ理由でロジャはよく食べられています。
2017.05.01(月)
文・撮影=古川 音(マレーシアごはんの会)