知る人ぞ知る美食の国、マレーシア。この連載では、マレーシアの“おいしいごはん”のとりこになった人たちが集う「マレーシアごはんの会」より、おいしいマレーシア情報をお届け。

マレーシアで医食同源を体感しよう

 マレーシアで働いていたときの、ある日のこと。同僚のマレーシア人が、会社でなにやら怪しげな真っ黒いスープを飲んでいるのを目撃。具はゆで卵がひとつ。白身は黒く染まり、あたりには漢方の匂いがぷんぷん。

 10年以上もヨガに通うヘルシー志向の彼女のことだから、きっとこのスープも体にいいものに違いない、と眺めていたら、「漢方を煮てきたの。生理中は体が冷えるから、このスープを飲むのよ」と教えてくれました。

マーケットや専門店で販売されている漢方。体調に合わせて、料理に加えたり、煮出して飲んだりする。

 ココナッツミルクをよく使い、飲み物が全般的に甘く、揚げ物料理が比較的多いマレーシア料理……と聞くと、想像できないかもしれませんが、マレーシア人の多くは意外にも健康志向なのです。体にいい食事を心がけ、たとえば、血流を良くし、体を温めるという理由で、料理に生姜をたくさん使ったり、スパイスの組み合わせで体調をととのえたりします。

 なかでも、中国系のマレーシア人は、食べることと健康を保つことは同じという「医食同源」の考えをもつ人が多く、ふだんの食事にうまく漢方を取りいれて、体調をケア。とくに、肉や野菜を一緒に煮込んだ漢方スープはひじょうにポピュラーな食事です。体にいいうえに味もおいしいので、私もマレーシアではしょっちゅう飲んでいます。ということで今回紹介するのは、マレーシア人の元気の源、おいしい漢方スープです!

なんとなく不調を感じたとき、日本人だったら市販の薬を飲むか病院にいくところ、彼らがまず駆けこむのは中国漢方店。常駐している漢方のスペシャリストに相談し、必要な生薬を調合してもらう。

 専門の漢方店には、高麗人参、当帰、山薬、羅漢果、白きくらげ、ナツメ、どんこ……など生薬がずらっと並んでいます。お店の人に相談して調合してもらってもいいし、店先に並んだ漢方キットを購入してもよし。

手軽に作れる漢方キット。キットの中身と水を一緒に煮込めば、漢方ティーや漢方スープが簡単にできあがる。

2017.01.18(水)
文・撮影=古川 音