夏になると太陽に恵まれ、海辺の街らしい陽気な空気にあふれるリマ。以前は、世界遺産の旧市街観光が旅の大きな目的だったが、ここ数年で状況は激変。今、リマといえば、とにかくグルメなのだ。美食家たちがこぞって賞賛する最先端の美味を体験しに出かけよう!

» 第1回 世界が最も注目する最先端キュイジーヌ
» 第2回 次なる美食トレンド“ニッケイ”の新境地
» 第4回 気取らない郷土料理を味わえるカジュアルレストラン

料理で国を変えたシェフの
情熱を感じるレストラン

ガストン・アクリオ氏(中央)。(C)Summum

 “ペルビアン”といえば今、世界の美食シーンを語る際に欠かすことのできない最重要キーワード。その進化と発展の礎を築いたのが国民的英雄シェフ、ガストン・アクリオ氏だ。フランスで調理を学び、1994年に奥さまのアストリッドさんと開いたレストランでは、卓越したクリエイティビティで伝統料理を再構築。ペルー料理を一躍、各国のカリスマシェフたちが熱い視線を送るガストロノミーへと昇華させたのだ。

 高級レストランからファストフードまで、幅広い世代・階層の人々に愛される美味を提供しているアクリオ氏。国内のみならず、欧米各国でも話題のダイニングを展開し、現在その数は50軒以上。それらのお店でふんだんに用いられるのは、個性豊かなペルー産の食材だ。

 ペルビアンの魅力を世界に広めていくなかでシェフは、困窮のなかにあった生産者にきちんとした収入をもたらすシステムを作り、貧しい家庭の子どもたちも通える料理学校を設立した。そして、海外から寄せられる賞賛は、ペルー社会において料理人を憧れの職業とし、生産者へのリスペクトを育み、さらに自国文化への誇りをも生み出した。まさに彼は“料理によって国を変えた”のである。

 情熱的に活躍を続けるシェフの料理をリマで味わうなら、必訪はやはり原点である「アストリッド・イ・ガストン」。美味なるサプライズに満ちたテイスティングコースのほか、アラカルトで気になるメニューを味わうのもいい。

撮影=橋本 篤
取材・文=矢野詔次郎
構成=矢野詔次郎
取材協力=コンドルトラベル
協力=PROMPERÚ ペルー政府観光庁