80年代以降の多彩な表現のミクスチャー

伊藤 YUKI、村上春樹、ほかにもバンプ・オブ・チキンを思わせる世界観だったり、彼女たちの使用している楽器が渋かったり。80年代から今に至るまでのいろんな表現がミクスチャーされているようで面白い。

山口 よく思うんだけど、作品が発表された時期を知っている僕らと、2010年代にまとめて知る世代とは、体験が違うんですよね。歴史を学ぶ姿勢は大事ですし、影響を与えたアーティストで掘り下げるという聴き方を音楽ファンにはしてほしいですが、一方で、全部ごちゃ混ぜで知ることのミクスチャー感が感性の鋭いクリエイターに伝わったときの化学反応にも期待したいです。

伊藤 きっとそれをできるのがウルトロンなんですよ。ネットで大量の情報をインプットすることができて、その中から自分たちが欲しい情報だけを選べるスキルを自然と持っている世代。彼らにも欠点はあると思いますが、この時代だからこそ持ち合わせた彼らの才能を見つめたいと思います。

 「スプートニク」の歌詞の中に「僕の左脳から1622キロ たった5文字の言葉が」ってフレーズがあるんだけど、ひとつの感情をここまで回りくどく強烈に表現する個性と、「限られた命とかそんなの分かんないけど 今日を終えるのはなんだか寂しくて」っていえる純粋さが共存していることも魅力のひとつ。北澤ゆうほの作る世界観はカラーはしっかりしているんだけど、宇宙の広がりを感じます。

山口 そんなウルトロン世代のバンドに触発されて浮かぶ「妄想分析」はどうなりますか?

伊藤 今日も一日が終わった。足、腕、顔。あらゆる筋肉が疲れ休息を求めている。ベッドに身をまかせ部屋の真ん中にぶらさがったエジソンにバイバイをする。暗闇、次の瞬間、目の前に宇宙が広がり、僕はそれに包まれる。

 無数の星が縦横無尽に飛び回り、虹色の雲がところどころで蠢く。どこを観ても規則性などはなく、DNAなどLEGOに過ぎないと思う。よくひとは“金縛りになる”というけれど、僕にとっては“自由”だ。恐怖などない、だた、あらゆる物から解放され宇宙を漂う。

 唯一、僕に残されたマインドは「好きな人がいる」ということ。あの子をこの宇宙に連れてきてあげたいし、手をつないで旅もしてみたい。そうだ! ここであの子とキスをしよう。

山口 早く小説を書いてください!

the peggies「スプートニク/LOVE TRIP」
Mule Records 2016年10月19日発売 
1,200円(税抜)
■the peggiesは、北澤ゆうほ(ヴォーカル&ギター)、石渡マキコ(ベース)、大貫みく(ドラムス)によるトリオ。中学校の軽音部で出会いバンドを結成し、2011年から東京のライブハウスシーンで活動を始めた。2014年に初の全国流通音源をタワーレコード限定でリリース。2015年には初のフルアルバム『NEW KINGDOM』を発表した。
■「スプートニク」作詞・作曲/北澤ゆうほ
http://thepeggies.com/

【動画サイト】
「スプートニク」

https://www.youtube.com/watch?v=CF2Ir2OFQgE

2016.10.14(金)
文=山口哲一、伊藤涼