音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

 さて、近々リリースされるラインナップから、彼らが太鼓判を押す楽曲は?

【次に流行る曲】
高橋優「さくらのうた」

歌詞に依存しすぎるJポップの問題点とは?

伊藤 今回は高橋優の13枚目のシングル「さくらのうた」、前回のWHITE JAM「咲かないで」に引き続き“桜ソング”です。毎年生まれる“桜ソング”ですが、今年はそこからヒット曲が生まれるか楽しみです。ことあるごとに四季をテーマにするJポップは、世界的に見ても稀な文化を持った存在だと思うのですが、山口さんはどう思いますか?

山口 先日、元SME社長の丸山茂雄さんとお話ししていて、「Jポップは歌詞に依存しすぎている。言葉に頼るとグルーブが落ちる」という発言があって、なるほどと思いました。世界のポップスの潮流の中での視座です。桜ソングは日本人の情緒に訴える、まさに言葉を大切にした楽曲ですね。

伊藤 おっと、そんなことを言っていましたか。もちろん音楽をどう受け取るかは人によって違いますし、ましてや音楽の定義なんてあるようでないようなものですから。でも僕の考え方は、Jポップは歌詞に依存するからこそのアイデンティティであって、もし現状を世界のマジョリティになってないと考えるんであれば、それはまだJポップ自体が世界に届いていないだけだと思います。確かにグルーブが欠落しているのがJポップですが、グルーブがないことが音楽における“負”ではない。ましてやグルーブのない音楽が世界を席巻しないとも言えないので、明日のJポップに期待しています。

山口 丸山さんは、2016年3月2日に拙著『新時代ミュージックビジネス最終講義』〈外部リンク〉の出版記念対談イベント「丸さんに訊くこれからの音楽ビジネス ニューミドルマンリレートーク完結編」〈外部リンク〉に出演していただきます。今の音楽ビジネスの仕組みを先駆的に作った方で、プレイステーションをヒットさせた「パラッパラッパー」のプロデューサーでもあります。音楽業界のレジェンドなので、是非、直接お話しして下さい。本コラムの読者にもいらしていただきたいです。無料のトークイベントです。

伊藤 これからの音楽業界で働きたい人は必聴ですね。

2016.02.28(日)
文=山口哲一、伊藤涼