ロックバンド・黒猫チェルシーのヴォーカルであり、個性派俳優としてもドラマ「まれ」などで活躍中の渡辺大知。大学の卒業制作として監督した映画『モーターズ』が劇場公開されるなど、さらに活動の場を広げる彼からの熱いメッセージを届ける。

初めて書いた曲は好きな先輩のために

――中学時代は卓球部に所属されていたそうですが、何をきっかけに音楽活動を始めようと思ったのですか?

 確かに、中学時代は卓球に夢中だったんですが、小さい頃からお話を作ることも好きで、小学生の頃は小説家を目指していたんです。それで中学に入って、ギターと出会ったことで、歌を作る方が簡単じゃん、と思ったんです。実際は全然簡単じゃないんですけど(笑)。それで、中2のとき、当時好きだった女の先輩が卒業することになって、初めて曲を作りました。その曲はそのコに聴かせることはなく、おかんに聴いてもらったんですが(笑)、たくさん悩みながら作っていくことで、「じゃあ次の曲を作ろう!」と思うようになっていきました。中3のときには、100曲は作っていましたね。

――その後、現バンドメンバーである岡本啓佑さんたちにヴォーカルとして引き抜かれたそうですね。

 そのうち、誰に聴かせるわけでもなく、一人で曲を作っていることが悔しくなったこと、憂歌団(1975年にデビューした大阪出身のブルース・バンド)のカッコ良さに衝撃を受けたことで、自分と音楽の趣味が合う友達とバンドを組みたい、と思うようになったんですね。それで高校に入ったときに、今のバンドメンバーと同じクラスになって、今に至る感じです(笑)。最初に出会ったとき、彼らはすでにバンドを組んでいたので、とても悔しかったんですが、向こうから僕に声をかけてくれたのは嬉しかったです。最初は音楽好きの友達同士による遊びの延長だったんですけれど、その頃から、高校を卒業したら映画の学校に進学したいと決めていたので、4人で映画を作ろうぜ、とも言っていました。

2015.11.06(金)
文=くれい響
撮影=榎本麻美