愛らしい笑顔とリサイタルでの演奏のギャップ

牛田智大(うしだ ともはる)
1999年福島県いわき市生まれ。父親の転勤に伴い、生後すぐ上海に移り6歳まで滞在。3歳よりピアノを始め、8歳の時から5年連続でショパン国際ピアノコンクール in Asiaで1位受賞。2012年には日本人ピアニストとして最年少の12歳でCDデビューを果たす。現在は、モスクワ音楽院ジュニア・カレッジに在籍している。

 1999年生まれ。ピアニストの中では最も若い世代に属する牛田智大。

 愛らしい笑顔と、リサイタルでの演奏の間には大きなギャップがある。細部までコントロールされた打鍵と、音色の豊かさ、情感に溢れたドラマティックな内容は、「大人」の演奏家に全く劣るところがない。10代前半でデビューし、プロとしての演奏活動を続けてきた。この1年で急速に成長し、かつてペダルに足が届かなかった身長も170センチを超えた。

「気持ちは子供のままなんですけど(笑)。ペダルには楽々足が届くようになりました。モスクワ音楽院のジュニア・カレッジで学んでいるのですが、かつてのソ連時代のように命がけで芸術家を目指す学生ばかりではなく、広い視野をもって将来の選択が持てるような環境になってきていると思います。必ずしも全員が音楽家になるとは限らないのですね。でも、僕はピアノを職業にしていきたいと思っているし、そのための努力を続けたいんです。ピアニストになれば、一日中ピアノを弾いていても怒られずに済みますし(!)」

「自分の人生からピアノを取ると何もなくなってしまう」。弾いている時間が一番の幸福。

2015.07.04(土)
文=小田島久恵
撮影=山本茂樹