スペイン北部、バスク州。スペイン語とは異なるバスク語を話すバスク人により独自の文化が守られているこの自治州で最も大きな町が、ビルバオ。20世紀後半からの町再生計画により、かつての工業都市もすっかりアートの街に大変貌をとげた。

 今やバスク州一の観光都市となったビルバオのレストラン、バル、そしてステイ先をご紹介。

» 第2回 イベリコ、ピンチョスを楽しめるバル
» 第3回 アートの街ならではのデザイナーズホテル

◆Azurmendi (アスルメンディ)

優れた長篇小説のごとき3ツ星シェフの演出は驚きの連続

左:「Bloody “Mar”」という牡蠣の一皿。言われた通りに、オイスターリーフ、海藻の天ぷら、牡蠣の順で食べると、口の中に海が広がる。
右:鳩の下にはパルメザンチーズで作ったキノコのクリームソース。カリフラワーのムースと合わせて食べる。この旅で食べた鳩の中ではベスト。

 国内最年少で3ツ星シェフとなったエネコ・アチャは何度も「自分の家にいるようにくつろいでほしい」と言ったが、こんなに広い家では、最後までリラックスすることはできなかった。しかし、これだけ楽しめるレストランはそうはあるまい。

左:リンゴとルッコラのデザートはドライアイスをかけるとミントの香りが広がる演出。
右:“ピクニック”で登場するバスケット。中を開けると3種の前菜。塩味、こってり、さっぱりと食べる順も決まっている。

 驚くほど広大な敷地には大きなレストラン棟が2つある。ひとつはイベント用、2012年にできた新しい棟でこの「アスルメンディ」を経営している。客はまずこのような説明を受けながら、レストランの上にある菜園に案内される。そこで「序章」が始まる。育てているトマトや果物の中に、いくつものアミューズが隠れている。話を聞きながら飲んだり食べたり。その後、レセプションに戻り、その場で小さなピクニック。席に着く前に厨房に連れて行かれ、料理人全員から「オラ!」と挨拶される。まるで居酒屋のようだ。

左:菜園に隠されているアミューズのひとつ。2種のオレンジとグレープフルーツのジュースにハーブティーを混ぜてある。ひとつ前のアミューズがしっかりしたタイプなので、これでさっぱりしてもらう計らい。
右:これもアミューズ。パルメザンチーズとカボチャの種のクッキー。隠れているさまが可愛い。

撮影=橋本 篤