世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第86回は、キューバを訪れた芹澤和美さんが、名作『老人の海』の舞台となった漁村をはじめとするヘミングウェイゆかりの地を訪ね歩きます。

ココナッツ型のバイクタクシーでショートトリップ

青い空、風にそよぐ南国の木、ボロボロの派手なアメ車。これがキューバの代名詞。

 小国なのにアメリカと真っ向から対立していたから、モノ不足で店の商品棚はガラガラ、道路を走るのは50年代のおんぼろアメ車。そんな質素な暮らしのなかに、キューバ革命以前の豪華な建物があったり、ラテンのリズムがどこからともなく聞こえてくるキューバ。この国は経済的には決して恵まれているとはいえないが、訪れるたびに、心の豊かさ、本当の豊かさを教えてくれる。

 賑やかな首都ハバナも楽しいけれど、何度か訪れると、よりローカルな空気も楽しんでみたくなる。ハバナから足を延ばしたのは、小さな漁村コヒマル。キューバといえば、アメリカの作家、アーネスト・ヘミングウェイが愛したことでも有名だが、なかでもコヒマルは、彼が居を構え、名作『老人と海』の舞台となった場所でもある。

その名のとおり、ココナッツの形をした可愛らしいバイクタクシー「Coco-Taxi」は料金もリーズナブル。

 コヒマルへの交通手段に選んだのは、旅行者向けのバイクタクシー「ココタクシー」。ローカル向けの乗り合いタクシーは外国人が乗ることは禁止されているし、外国人専用のタクシーは料金交渉とチップの計算が面倒。バイクタクシーで、風に吹かれながらのんびり漁村へ向かおうと思ったのだ。

悪路も物ともせず走るドライバーの背中が、なんだか頼もしい。

 ココタクシーは、乗用車では通れないような石畳の細い道や路地裏でも走ることができるので、ハバナの旧市街観光にはとても便利な乗り物。でも、ハバナからコヒマルまでは約7キロだから、バイクタクシーで往復するにはちょっと距離がある。偶然立ち止まったココタクシーのドライバーに「ハバナから出ても大丈夫?」とダメもとで頼んでみたところ、「OK、まかせて!」とのこと。往復でお願いして、さっそくコヒマルへと向かった。

途中、ガソリンスタンドに立ち寄って給油も済ませ、準備は万全だ。

2015.05.19(火)
文・撮影=芹澤和美